「今月もサプリの販売目標に届かず、院長に詰められた」「売れなかった分のインソールを、結局自分で買い取った」。施術よりも物販の数字ばかり求められて、つらさを感じている柔道整復師は少なくありません。
結論から言うと、整骨院が物販の目標を設けること自体は違法ではありませんが、未達を理由に給料を差し引いたり、自腹で買い取らせたりすることは、法律上の問題があります。この記事では、物販ノルマの法的なルールと、つらいときの対処法・相談先を解説します。
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物販ノルマそのものは違法ではないが限度がある
整骨院がサプリやインソール、サポーターなどの販売目標を決めること自体は、直ちに違法にはなりません。ただし、未達へのペナルティとして給料を差し引くことや、自腹での購入を強いることは、労働基準法などに反するおそれがあります。
物販ノルマとは、施術以外の商品を、一定の期間内にどれだけ販売するかを決めた目標のことです。整骨院では、自費メニューの回数券と並んで、サプリ・インソール・枕などが対象になりやすい傾向があります。
施術を終えた患者さんに、院長の視線を感じながら商品をすすめる。必要とは思えない人にまで声をかけることに、罪悪感を覚える人もいるでしょう。その違和感は、治療家として大切な感覚です。
給料からの天引きは原則として認められない
労働基準法第24条では、賃金は原則として全額を支払うことが定められています。ノルマに届かなかったことを理由に、本人の同意なく給料から差し引くことは、この原則に反します。
また、同法第16条では、あらかじめ違約金や損害賠償の額を決めておく契約が禁止されています。「未達1件につき〇円」のような罰金の決まりは、この規定に反するおそれがあります。
減給の制裁にも上限がある
就業規則に基づく懲戒として減給をする場合でも、労働基準法第91条で上限が決まっています。1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、合計でも1回の給料の総額の10分の1までです。
そもそも、ノルマに届かないことだけを理由に懲戒処分をすることが妥当かどうかも問われます。減給が続いている場合は、給与明細を保管しておきましょう。
自腹購入や過度な叱責は問題になる
売れなかった商品を自腹で買い取らせることや、未達を理由に人格を否定するような叱責を繰り返すことは、パワーハラスメントにあたる可能性があります。2022年4月からは、中小企業にもパワハラ防止措置が義務づけられています。
「自分で使えばいい」「家族に配ればいい」と言われ、断れずに買ってしまう。こうした自腹購入が続くと、実質的に給料が減っているのと同じことになります。
厚生労働省の令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査では、過去3年以内にパワハラを受けたと答えた労働者は19.3%でした。パワハラを受けた人のうち61.1%が「仕事への意欲が減退した」と答えています。
パワハラにあたりやすい例
- 達成できない目標を一方的に課し、達成できないと強く責める
- スタッフの前で数字を読み上げ、名指しで叱責する
- 売れ残った商品を、本人の負担で買い取らせる
- 目標未達を理由に、休みを減らしたり帰らせなかったりする
厚生労働省は、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制を、パワハラの「過大な要求」の例として示しています。物販ノルマも、内容や伝え方によってはこれにあたります。
患者さんへの強引な販売のリスク
ノルマに追われて、患者さんに必要のない商品を強くすすめると、患者さんとの信頼関係を損ないます。口コミや紹介で成り立つ整骨院にとって、長い目で見れば大きな損失です。
商品の効果を大げさに伝えることは、法律上の問題にもつながりかねません。広告や説明の注意点は、誇大広告を頼まれたときの記事も参考にしてください。
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物販ノルマがつらいときの対処法
物販ノルマがつらいときは、ノルマの内容と自分が受けた扱いを記録し、まずは院長と話し合い、それでも改善しなければ外部の窓口に相談するのが基本の流れです。一人で抱え込むと、心も体も追い詰められてしまいます。
話し合いでは、感情的にならず、「患者さんに必要なものをすすめたい」という治療家としての考えを伝えると、受け入れられやすくなります。
対処の手順
- ノルマの内容、未達のときに言われたこと・されたことを日付つきで記録する
- 自腹で買った商品のレシートや、天引きされた給与明細を保管する
- 院長に、目標の見直しや評価方法について相談する
- 改善しない場合は、総合労働相談コーナーや労働基準監督署に相談する
- 心身の不調がある場合は、早めに医療機関を受診する
給与明細で確認したいこと
給与明細に「物販代」「商品代」などの名目で差し引きがないかを確認しましょう。本人と書面で合意した社宅費などは別として、ノルマに関連した差し引きは問題になる可能性があります。
罰金や天引きについては、整骨院の罰金・天引きの記事でくわしく解説しています。
物販より施術を大切にできる職場の選び方
物販ノルマに悩まずに働きたいなら、転職先を選ぶ段階で、売上目標の内容と評価の方法を確認しておくことが大切です。施術の質を評価してくれる院を選べば、患者さんと向き合う時間を大切にできます。
物販がある院がすべて悪いわけではありません。患者さんの状態に合わせて必要な人にだけすすめる院もあります。大切なのは、目標の決め方と、達成できなかったときの扱いです。
見学・面接で確認したいこと
- スタッフ個人に物販や回数券の目標があるか
- 目標に届かなかったとき、給料や評価にどう影響するか
- 評価の基準に、施術の質や患者さんの満足度が含まれているか
- スタッフが商品を自分で購入する決まりがないか
回数券のノルマについては整骨院の回数券ノルマの記事で解説しています。パワハラの相談先は整骨院のパワハラの相談先の記事にまとめています。
給与体系もあわせて確認する
物販の売上が歩合給に大きく反映される院では、自然と販売のプレッシャーが強くなります。固定給と歩合の割合、歩合の計算方法を確認しておくと、入職後の働き方をイメージしやすくなります。
「売上に応じて給料が上がる」こと自体は悪くありません。ただ、自分がどんな治療家でありたいかと照らし合わせて、合う院を選ぶことが大切です。
よくある質問(FAQ)
整骨院でサプリの販売ノルマがあるのは違法ですか?
販売目標を決めること自体は、直ちに違法にはなりません。ただし、未達を理由に給料を差し引いたり、自腹で買い取らせたりすることは、労働基準法やパワハラの観点から問題になる可能性があります。
物販ノルマに届かなかった分を給料から引かれました。取り戻せますか?
賃金は原則として全額払うことが法律で定められており、本人の同意なくノルマ未達を理由に差し引くことは問題になります。給与明細を保管し、院に説明を求め、改善しない場合は労働基準監督署に相談しましょう。
売れ残ったインソールを自分で買うように言われました。断ってもいいですか?
断って構いません。自腹での購入を強いることは、実質的に給料を減らすことと同じで、パワハラにあたる可能性もあります。言われた日時と内容を記録しておくと、相談するときに役立ちます。
患者さんに必要のない商品をすすめるのがつらいです。どうすればいいですか?
その感覚は治療家として大切なものです。院長には「必要な患者さんにしっかりすすめたい」と伝え、目標の見直しを相談しましょう。改善しない場合は、施術を重視する院への転職も考えてよいでしょう。
物販ノルマがない整骨院はどうやって探せばいいですか?
見学や面接で、スタッフ個人の物販目標の有無と、未達時の扱いを具体的に聞くのが確実です。評価基準に施術の質や患者さんの満足度が含まれているかも確認しましょう。
まとめ|物販ノルマのつらさは我慢しなくていい
整骨院が物販の目標を設けること自体は違法ではありませんが、未達を理由にした給料の天引きや自腹購入の強制は、法律上の問題があります。過度な叱責は、パワハラにあたる可能性もあります。
- 賃金は全額払いが原則。ノルマ未達での天引きは問題
- 違約金や罰金をあらかじめ決めることは禁止されている
- 言われたこと・されたことは日付つきで記録する
- 改善しなければ、外部の窓口への相談や転職も考える
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