鍼灸院で保険の不正請求を頼まれたら|鍼灸師が知るべきルール

夜の鍼灸院で施術録を前に、保険請求の書き方に迷う男性鍼灸師のイラスト
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「来ていない日の分も施術日に入れておいて」「同意書の期限が切れているけど、そのまま請求して」。鍼灸院で働くなかで、院長からこうした指示を受け、モヤモヤを抱える鍼灸師がいます。

鍼灸の保険施術(療養費)には、同意書や請求方法について細かなルールがあります。この記事では、療養費の受領委任と同意書のしくみ、不正請求にあたるおそれがある指示の例、指示を受けたときの断り方と相談先を解説します。

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目次

鍼灸の療養費と受領委任のしくみ

鍼灸の療養費とは、医師の同意を得た特定の病気について、はり・きゅうの施術費の一部を健康保険から支給する制度のことです。施術所が患者さんに代わって請求する「受領委任」の取り扱いには、国の定めたルールがあります。

厚生労働省は、はり・きゅう、あん摩マッサージ指圧の療養費について、2019年1月から受領委任の取り扱いを始めました。受領委任を行う施術所は、地方厚生局への申し出などの手続きを済ませ、決められたルールに従って請求する必要があります。

保険の対象になる6つの病気

協会けんぽの案内では、はり・きゅうの療養費の対象として、次の6つの病気が挙げられています。

  • 神経痛
  • リウマチ
  • 頸腕症候群
  • 五十肩
  • 腰痛症
  • 頸椎捻挫後遺症

これら以外の病気は、同意書の内容などから個別に判断されます。肩こりや疲労回復のための施術は、原則として保険の対象になりません。

同意書は6か月ごとに確認が必要

2018年10月から、はり・きゅうの同意書の有効期間は、それまでの3か月から6か月に延びました。6か月を超えて施術を続ける場合は、患者さんがあらためて医師の診察を受け、同意を得る必要があります。

同意書の期限が切れたまま請求を続けることは、ルールに反する請求になります。期限の管理は、施術者一人ひとりが意識しておきたい基本です。

施術録は請求の根拠になる記録

保険で施術した内容は、施術日、施術部位、施術内容などを施術録に正確に残すことが基本です。施術録は、請求が正しく行われたかを確かめるときの根拠になります。

忙しい日ほど、施術録をまとめて後から書く習慣がつきがちです。しかし、記憶だけで書くと日付や内容がずれやすくなります。施術のたびに、その場で記録する習慣をつけておきましょう。

不正請求にあたるおそれがある指示の例

実際の施術内容や日数と違う内容で請求することは、不正請求にあたるおそれがあります。院長の指示であっても、施術者として請求に関わった以上、責任を問われる可能性がある点に注意が必要です。

受付締め後、院長に呼ばれて施術録の日付を書き足すよう言われる。断れずにペンを取ったものの、帰り道でずっと胸がざわつく。こうした場面は、決して他人事ではありません。

注意したい指示のパターン

指示の内容 問題になるおそれ
来院していない日を施術日として記録する 施術日数の水増し
同意書の期限が切れたまま請求する 要件を満たさない請求
肩こりなど対象外の施術を保険で請求する 対象外の病気での請求
白紙の申請書に患者さんの署名だけもらう 内容を確認できない請求
自費の施術を保険の施術として記録する 施術内容の付け替え

不正請求が発覚したときのリスク

不正請求が明らかになると、院は受領委任の取り扱いを中止されるなど、保険施術を続けられなくなるおそれがあります。悪質な場合は、刑事事件として扱われることもあり得ます。

働く鍼灸師にとっても、職場を失うだけでなく、施術者としての信頼を損なうリスクがあります。柔道整復の業界で起きている同じような問題は、接骨院の闇と保険の不正請求の記事でも解説しています。

「みんなやっている」は理由にならない

不正な請求を指示する院では、「どこの院でもやっている」「少しくらい大丈夫」と説明されることがあります。しかし、ほかの院がどうであれ、ルールに反する請求であることに変わりはありません。

新人のうちは、院長の言うことが業界の常識だと思い込みやすいものです。少しでも違和感を覚えたら、その感覚を大切にして、保険者や地方厚生局が公開しているルールで確かめてみましょう。

患者さんに対しても、保険が使えるかどうかを正しく説明することが信頼につながります。「保険でお得に受けられますよ」と安易に案内するのではなく、対象となる病気と同意書の必要性を伝えることが、施術者としての誠実さです。

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不正請求を頼まれたときの断り方と相談先

不正請求にあたるおそれがある指示を受けたら、「ルールを確認したい」と伝えて記録に手を加えないことが第一です。一人で抱え込まず、外部の相談先を使い、必要なら職場を離れることも考えましょう。

厚生労働省の「令和6年衛生行政報告例」によると、就業しているはり師は136,736人、はり・きゅうを行う施術所は35,494か所です。働く場所の選択肢は多く、不正に加担しなければ続けられない職場にとどまる必要はありません。

指示を受けたときの対応手順

  1. その場で記録や請求書類に手を加えない
  2. 「同意書の期限と、保険の対象かを確認させてください」と伝える
  3. 指示を受けた日時と内容をメモに残す
  4. 保険者(協会けんぽなど)や地方厚生局が公開するルールを確認する
  5. 改善されない場合は、外部の窓口への相談や転職を検討する

職場を選ぶときに確認したいこと

転職先を選ぶときは、保険施術の割合や、同意書の管理方法、請求事務を誰が担当しているかを確認すると、院の姿勢が見えてきます。説明があいまいな院は慎重に判断しましょう。

ブラックな鍼灸院の見分け方は、ブラック鍼灸院で働き続けていいかの記事で詳しく解説しています。

院長に直接意見を言うのが難しい場合は、先輩や同僚に「このやり方で合っていますか」と相談するのも一つの方法です。同じ違和感を持つ人がいれば、一緒に改善を求めやすくなります。

保険施術のルールを守っている院は、患者さんへの説明も丁寧で、自費と保険の区別もはっきりしています。転職先の見学では、受付での保険証の確認や同意書の扱いにも目を向けてみましょう。

不安を一人で抱えたまま働き続けると、仕事そのものが楽しくなくなってしまいます。鍼灸師として誇りを持って働ける環境を選ぶことは、患者さんのためにも、自分のキャリアのためにも大切なことです。

よくある質問(FAQ)

院長に言われて施術日を書き足しただけでも、問題になりますか?

実際と違う施術日を記録すると、指示を受けた場合でも不正請求に関わったと見なされるおそれがあります。手を加える前に「ルールを確認させてください」と伝え、記録には事実だけを書きましょう。

肩こりで来ている患者さんに保険を使ってもいいですか?

はり・きゅうの療養費は、神経痛や腰痛症など医師の同意がある病気が対象です。肩こりや疲れを取る目的の施術は原則として保険の対象外なので、自費での施術として扱いましょう。

同意書の期限はどのくらいですか?

2018年10月から、はり・きゅうの同意書の有効期間は6か月になりました。6か月を超えて施術を続ける場合は、患者さんが医師の診察を受けて、あらためて同意を得る必要があります。

不正請求をしている院を辞めたいとき、理由は正直に言うべきですか?

退職理由は「一身上の都合」で十分です。トラブルを避けるため、退職の話と請求の問題は分けて考え、必要な場合は外部の窓口に相談しましょう。指示の記録は手元に残しておくと安心です。

受領委任を扱う鍼灸院で働くとき、施術者にも手続きは必要ですか?

受領委任の取り扱いでは、施術所だけでなく、そこで施術する施術者についても地方厚生局への届け出などが求められます。入職時に院の担当者に、自分の手続きが済んでいるかを確認しておきましょう。

まとめ|保険のルールを知ることが自分を守る

鍼灸の療養費には、対象となる病気や同意書の期限など、守るべきルールがあります。院長の指示であっても、実際と違う請求に関われば、施術者自身もリスクを負います。

  • 受領委任は2019年1月から始まり、ルールに沿った請求が求められる
  • 保険の対象は神経痛・腰痛症など6つの病気が基本
  • 同意書の有効期間は6か月で、期限切れの請求はできない
  • 指示を受けたら記録に手を加えず、相談先を使う

今の職場から離れることを考えている方は、鍼灸院の辞め方の記事もあわせて読んでみてください。

治療家コネクトでは、退職や転職のご相談を無料で承っています。保険請求のルールを守る院で働きたい方、今の職場に不安がある方も、お気軽にご相談ください。まずは相談だけでも大丈夫です。

夜の鍼灸院で施術録を前に、保険請求の書き方に迷う男性鍼灸師のイラスト

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