鍼灸院の辞め方の基本は、退職したい日の1〜2か月前までに院長へ直接伝え、退職届を出し、引き継ぎと有給休暇の消化を計画的に進めることです。手順を押さえておけば、業界が狭い鍼灸の世界でも、関係をこじらせずに辞められます。
「スタッフが少ないから言い出しにくい」「担当の患者さんに申し訳ない」。鍼灸院を辞めたいと思いながら、なかなか切り出せない鍼灸師は少なくありません。この記事では、退職を伝える時期の目安と伝え方、引き止めへの対応、円満に辞めるまでの手順を解説します。
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鍼灸院を辞めると伝える時期の目安
鍼灸院に退職を伝える時期は、法律上は2週間前でも足りますが、引き継ぎや人員の補充を考えると、退職希望日の1〜2か月前が現実的な目安です。まずは就業規則の定めを確認しましょう。
法律と就業規則のルール
民法第627条では、期間の定めのない雇用契約の場合、退職を申し出てから2週間がたてば雇用契約は終了すると定められています。正社員であれば、院が認めなくても法律上は辞めることができます。
一方、多くの職場では就業規則で「退職の1か月前までに申し出ること」などと定めています。円満に辞めたいなら、就業規則の期限を守るのが無難です。契約社員など期間の定めがある場合は、契約期間の途中で辞めるには、やむを得ない事由が必要とされている点に注意しましょう。
伝えるタイミングで気をつけたいこと
退職を伝えるのは、繁忙期や院長が忙しい時間帯を避け、落ち着いて話せる日を選びます。月末の請求業務の時期や、スタッフの退職が重なっている時期は、院長も余裕がなく話がこじれやすいため避けたほうが無難です。よくあるのは、診療終了後に「少しお時間をいただけますか」と声をかけ、スタッフルームで切り出すパターンです。
同僚や患者さんに先に話してしまうと、院長の耳に間接的に入り、関係がこじれる原因になります。最初に伝える相手は、必ず院長か直属の上司にしましょう。賞与の支給日や有給休暇の残日数も確認してから、退職日を逆算して決めると損をしにくくなります。
院長への伝え方と、引き止められたときの対応
院長には、退職の意思と希望の退職日をはっきり伝え、理由は前向きで簡潔なものにするのが基本です。引き止められても、意思が固いことを落ち着いて繰り返せば、話は前に進みます。
退職を伝えるときの例文
伝え方は、「相談」ではなく「報告」の形にするのがポイントです。たとえば、次のように話します。
「突然のお話で申し訳ありません。一身上の都合により、○月末で退職させていただきたいと考えています。担当の患者さんの引き継ぎは責任を持って行います。これまで本当にお世話になりました。」
理由を聞かれたら、「新しい分野で経験を積みたい」「家庭の事情で働き方を変えたい」など、前向きな理由や個人的な事情で十分です。職場への不満を細かく伝える必要はありません。
不満を正直に伝えると、「それなら改善するから」と話が条件交渉に移り、かえって辞めにくくなることがあります。すでに辞めると決めているなら、理由は短く、意思ははっきりと伝えるのが、お互いにとって負担の少ない伝え方です。
引き止めにあったときの対応
よくある引き止めと、対応の例は次のとおりです。
| 院長の言葉 | 対応の例 |
|---|---|
| 人が足りないから困る | 引き継ぎに協力する姿勢を示し、退職日は変えない |
| 給料を上げるから残ってほしい | 感謝を伝えつつ、条件ではなく将来の方向性で決めたと伝える |
| 患者さんを見捨てるのか | 担当患者さんの引き継ぎを丁寧に行うと約束する |
| 今辞めたら業界でやっていけない | 感情的にならず、意思が変わらないことを繰り返す |
何度話しても退職を認めてもらえない、強い言葉で責められるといった場合は、ブラック鍼灸院の抜け出し方も参考にしてください。自分で伝えるのが難しい状況なら、退職代行を使う前の判断基準も知っておくと選択肢が広がります。
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円満に辞めるための手順と、次の職場の準備
円満に辞めるには、退職届の提出、患者さんの引き継ぎ、有給休暇の消化、備品の返却と書類の受け取りを、退職日から逆算して順番に進めることが大切です。並行して次の職場の準備も進めておきます。
退職までの手順
- 就業規則で退職の申し出期限と有給の残日数を確認する
- 院長に口頭で退職の意思と希望日を伝える
- 退職日が決まったら、退職届を書面で提出する
- 担当患者さんの施術内容や注意点を記録にまとめて引き継ぐ
- 有給休暇の消化日程を院と相談して決める
- 鍵や施術着などの備品を返却し、離職票や源泉徴収票を受け取る
口頭だけで済ませると、退職日をめぐって後から食い違いが起きることがあります。退職届は控えを取っておくと安心です。有給の使い方は、退職時の有給消化の進め方で詳しく解説しています。
厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、2024年の有給休暇の取得率は66.9%で、過去最高となりました。退職前に残っている有給を使うことは正当な権利です。ただし、引き継ぎに必要な出勤日は確保したうえで、院と日程を相談すると角が立ちにくくなります。
引き継ぎの記録には、患者さんごとの主訴、刺鍼の部位や深さ、使っている鍼の種類、施術後の反応や注意点を残しておくと、後任の鍼灸師が困りません。患者さんの安心にもつながり、最後まで責任を持って働いた印象を院にも残せます。
辞める前に次の職場の目星をつける
収入が途切れる不安や焦りを避けるためにも、在職中に転職活動を進め、次の職場の目星をつけてから退職するのが理想です。退職後に失業給付を受けられる場合もありますが、手続きや待機期間があるため、すぐに受け取れるわけではありません。
厚生労働省の衛生行政報告例によると、令和6年末の就業はり師は136,736人、はり及びきゅうを行う施術所は35,494か所で、前回から4.7%増えています。鍼灸院だけでなく、鍼灸接骨院や美容鍼サロン、訪問鍼灸など、資格を活かせる職場の選択肢は広がっています。
次の職場を選ぶときは、今の鍼灸院を辞めたい理由を書き出し、それが解消される条件を優先順位で並べておくと、同じ悩みを繰り返しにくくなります。
よくある質問
鍼灸院を辞めるのは何か月前に言えばいいですか?
法律上は2週間前の申し出で足りますが、引き継ぎや人員の補充を考えると、1〜2か月前に伝えるのが現実的です。就業規則に申し出の期限が書かれている場合は、その期限を守ると円満に進めやすくなります。
鍼灸院の院長に退職を引き止められたらどうすればいいですか?
感謝を伝えたうえで、退職の意思が変わらないことを落ち着いて繰り返しましょう。給料アップなどの条件を示されても、迷いがないなら条件ではなく将来の方向性で決めたと伝えます。引き継ぎに協力する姿勢を見せると、話がまとまりやすくなります。
担当の患者さんにはいつ伝えればいいですか?
患者さんへの報告は、院長と相談して時期と伝え方を決めてからにしましょう。院長より先に患者さんへ話すと、トラブルの原因になります。施術内容や注意点を記録にまとめ、後任の鍼灸師に引き継いでから伝えると、患者さんも安心できます。
鍼灸院を1年未満で辞めても転職できますか?
転職はできます。短期間での退職は理由を聞かれることが多いため、「施術の幅を広げたい」など前向きな理由を用意しておきましょう。前の職場で身につけた技術や対応した症例を具体的に話せると、経験の短さを補えます。
退職届と退職願はどちらを出せばいいですか?
退職の意思を院長に伝え、退職日が決まったあとに出すなら退職届が一般的です。退職願は「退職させてほしい」とお願いする書類で、院の承諾を前提にしています。どちらを出すか院の決まりがある場合は、それに従いましょう。
まとめ
鍼灸院を辞めるときは、1〜2か月前までに院長へ直接伝え、退職届・引き継ぎ・有給消化を計画的に進めることが、円満退職の近道です。
- 法律上は2週間前でも辞められるが、就業規則の期限を守るのが無難
- 最初に伝える相手は院長か直属の上司にする
- 理由は前向きで簡潔にし、引き止めには意思を繰り返す
- 退職届は書面で出し、在職中に次の職場の目星をつける
辞めると決めたあとは、次の働き方を考える時間でもあります。鍼灸師として納得できる環境を、落ち着いて探していきましょう。
鍼灸院を辞めることは、逃げでも裏切りでもありません。手順を踏んで誠実に伝えれば、多くの場合は円満に区切りをつけられます。次の一歩を安心して踏み出すために、準備から始めていきましょう。
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