施術中に患者さんの前で怒鳴られる、質問すると無視される、休みの日にも院長から何度も連絡が来る。整骨院で働く柔道整復師から、こうした悩みを聞くことは珍しくありません。
パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場での優越的な関係を背景に、業務上必要な範囲を超えた言動で、働く人の職場環境を害することです。整骨院のような少人数の職場では、院長と直接ぶつかりやすく、誰にも相談できないまま我慢してしまう人が多くいます。
この記事では、整骨院でよくあるパワハラの例、無料で使える相談先、相談の前に残しておきたい記録、辞めるかどうかの判断の目安を、厚生労働省の公表データとあわせて解説します。
「これってパワハラなのかな」と一人で抱えている方は、治療家コネクトのLINE無料相談で話を聞くこともできます。
整骨院で起きやすいパワハラの例と判断の目安
整骨院のパワハラかどうかは、「業務上必要かどうか」と「相手を傷つける言動かどうか」の2つで判断するのが目安です。技術指導のための注意は必要でも、人格を否定する言葉や暴力は、指導の範囲を超えています。
厚生労働省は、パワハラの典型例として6つの類型を示しています。整骨院の現場に置きかえると、次のような場面が当てはまります。
| 類型 | 整骨院でよくある例 |
|---|---|
| 身体的な攻撃 | 施術練習中に叩かれる、物を投げられる |
| 精神的な攻撃 | 患者さんの前で「使えない」と怒鳴られる |
| 人間関係からの切り離し | 自分だけミーティングに呼ばれない |
| 過大な要求 | 教わっていない施術を新人一人に任せ、できないと責める |
| 過小な要求 | 何か月も掃除と受付だけを命じられる |
| 個の侵害 | 休日の予定や恋人のことを執拗に聞かれる |
「指導」と「パワハラ」の線引き
施術ミスについて、理由と改善方法を伝えるのは正当な指導です。一方で、同じミスを何十分も責め続ける、ほかのスタッフの前でさらし者にするといった言動は、必要な範囲を超えていると考えられます。
よくあるケースとして、受付締め後の居残り練習で、毎晩のように「向いていない」「辞めてしまえ」と言われ続けるという相談があります。言葉の内容と頻度を、冷静に振り返ってみてください。
パワハラの相談件数は全国で高止まりしている
厚生労働省の「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、全国の総合労働相談件数は120万1,881件で、5年連続で120万件を超えました。民事上の相談のうち「いじめ・嫌がらせ」は54,987件で、13年連続で最も多い内容でした。
職場のいじめや嫌がらせは、多くの人が直面している問題です。「自分が弱いだけ」と思い込む必要はありません。
パワハラを受け続けると、「自分が悪いから怒られるのだ」と考えてしまいがちです。しかし、ミスがあったとしても、人格を否定する言葉や暴力が許されるわけではありません。行為そのものが問題であることを、まず知っておいてください。
整骨院のパワハラを相談できる窓口と相談の順番
整骨院でパワハラを受けたときは、まず院内の相談窓口や院長以外の責任者、それが難しければ各都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」に相談するのが基本です。総合労働相談コーナーは無料で、電話や面談で相談できます。
パワハラ防止のための措置は、2020年6月から大企業、2022年4月から中小企業にも事業主の義務になりました。小さな整骨院であっても、相談窓口を設けるなどの対応が求められています。
院内で相談できない場合の相談先
- 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署内)
- 都道府県や自治体の労働相談窓口
- 法テラスや弁護士会の法律相談
- 心身の不調があるときは、医療機関や心療内科
院長自身が加害者で、ほかに上司がいない小規模な整骨院は少なくありません。その場合は、最初から外部の窓口に相談してかまいません。
相談する前に残しておきたい記録
相談先で状況を正確に伝えるために、次のような記録を残しておきましょう。
- 日時・場所・言われた言葉をそのままメモする
- その場にいた人(スタッフや患者さん)を書いておく
- LINEやメールのメッセージは画面を保存する
- 体調の変化や通院した日を記録する
メモはその日のうちに書くのがポイントです。帰りの電車でスマートフォンのメモ帳に残すだけでも、後から大きな助けになります。
相談するときは、「いつから」「どのくらいの頻度で」「誰に」「何をされたか」を順番に話せるよう準備しておくとスムーズです。相談先によっては、事業主への助言や指導、話し合いのあっせんといった制度につないでもらえることもあります。
家族や学生時代の友人など、業界の外にいる人に話すだけでも、気持ちが整理されることがあります。整骨院の常識が、ほかの職場では通用しないことに気づくきっかけにもなります。
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パワハラのある整骨院を辞めるか迷ったときの判断基準
パワハラが続き、相談しても改善されない場合は、辞めることを前向きに考えてよい状況です。特に、眠れない、食欲がないなど体調に影響が出ているなら、自分の心身を守ることを優先してください。
整骨院の人間関係の悩みは、職場を変えることで解決するケースが多くあります。院長の方針や価値観は、働く側の努力ではなかなか変えられないからです。人間関係の悩み全般は整骨院の人間関係に悩む方へ|よくあるトラブルと対処法でも解説しています。
辞めた方がよいサイン
- 暴力や、人格を否定する言葉が繰り返されている
- 相談したことで、さらに当たりが強くなった
- 出勤前に体が動かない、涙が出るなどの症状がある
- ほかのスタッフも次々と辞めている
こうしたサインがあるなら、我慢を続けるほど回復に時間がかかります。体調が悪い場合は、まず医療機関を受診し、休むことも選択肢に入れてください。
パワハラが理由で辞めるときの注意点
退職を伝えるのがこわいときは、書面やメールで退職の意思を伝える方法もあります。直接話すのが難しい場合の選択肢は、整骨院を退職代行で辞めるのはあり?でまとめています。
また、ハラスメントが原因で辞めた場合、雇用保険では「正当な理由のある自己都合退職」として扱われる可能性があります。残しておいた記録は、離職理由を確認するときにも役立ちます。次の職場を選ぶときは、ブラックな整骨院の特徴を知っておくと安心です。
転職先を探すときは、見学の際にスタッフ同士の会話や、院長がスタッフに声をかけるときの口調を見ておくと参考になります。スタッフの平均勤続年数や、直近1年で何人辞めたかを面接で聞いてみるのも一つの方法です。
よくある質問(FAQ)
院長に怒鳴られるのは整骨院では普通のことですか?
普通のことではありません。施術ミスへの注意は必要でも、怒鳴る、人格を否定するといった言動は、業務上必要な範囲を超えたパワハラにあたる可能性があります。日時と言われた内容を記録し、外部の相談窓口に相談してみましょう。
小さな整骨院でもパワハラ対策は義務ですか?
はい、義務です。パワハラ防止のための雇用管理上の措置は、2022年4月から中小企業にも義務化されました。従業員が少ない整骨院でも、相談窓口の設置などの対応が求められています。
パワハラの証拠がなくても相談できますか?
証拠がなくても相談はできます。ただ、日時や言われた言葉のメモ、メッセージの画面保存などがあると、状況を正確に伝えやすくなります。今日からでも、思い出せる範囲で記録を始めておくと安心です。
パワハラが原因で整骨院を辞めたら、転職で不利になりますか?
不利になるとは限りません。面接では職場への批判を並べるより、「人を育てる環境で長く働きたい」など、次の職場で大切にしたいことを伝えると前向きに受け止められます。理由を簡潔にまとめておきましょう。
パワハラを相談したことが院長に知られたら、不利な扱いを受けませんか?
パワハラの相談をしたことを理由に、解雇や減給などの不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。それでも不安な場合は、外部の総合労働相談コーナーに匿名で相談し、どう進めるかを一緒に考えてもらう方法があります。
まとめ
整骨院のパワハラは、少人数の職場だからこそ相談しにくく、一人で抱え込みやすい問題です。厚生労働省のデータでも、いじめ・嫌がらせの相談は13年連続で最も多い内容になっています。
- 「業務上必要か」「人を傷つける言動か」でパワハラを見分ける
- 院内で相談できなければ、総合労働相談コーナーへ
- 日時・言葉・目撃者・体調の変化を記録しておく
- 改善されない、体調に影響があるなら職場を変える選択を
あなたが安心して施術に向き合える職場は、必ずあります。まずは記録と相談から始めましょう。
「パワハラかどうか自信がない」「辞めたいけれど次が不安」という段階でも大丈夫です。
治療家コネクトでは、退職や転職のご相談を無料で承っています。まずは相談だけでも大丈夫です。話しながら気持ちを整理するところから、一緒に始めましょう。



