「来月から隣の市の分院に行ってほしい」。グループで複数の店舗を持つ整骨院では、こうした転勤や異動の打診が突然あることがあります。
通勤時間が大きく変わったり、慣れた患者さんと離れたりするのは、柔道整復師にとって大きな負担です。家庭の事情で引っ越しが難しい方なら、なおさら悩むでしょう。
この記事では、整骨院の転勤・異動を断れるかどうかの考え方、2024年4月から始まった労働条件明示のルール、入社前と打診されたときに確認したいことを、公的な情報をもとに解説します。
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整骨院の転勤・異動は断れる?基本の考え方
整骨院の転勤・異動を断れるかどうかは、雇用契約書や就業規則に「勤務地が変わることがある」と書かれているかで大きく変わります。勤務地が限定されている契約なら、原則として本人の同意なしに別の店舗へ移されることはありません。
転勤とは、勤務する店舗や事業所が変わることを伴う配置の変更のことです。グループ整骨院では、同じ法人の別店舗への「店舗移動」という形で行われることが多くあります。
契約書に書かれた勤務地がポイント
雇用契約書や就業規則に「業務の都合により勤務地を変更することがある」と書かれている場合、院は一定の範囲で転勤を命じることができると考えられています。反対に、勤務地を特定の店舗に限定する約束がある場合は、別の店舗への転勤には本人の同意が必要です。
ただし、契約に書かれていれば何でも認められるわけではありません。労働契約法では、権利を濫用してはならないと定められており、業務上の必要がない転勤や、嫌がらせ目的の異動は問題になることがあります。
グループ整骨院で異動が多い理由
多店舗展開をしている整骨院グループでは、新しい分院の立ち上げや人手不足の店舗の穴埋めのために、店舗間の異動がよく行われます。個人の院では転勤がない代わりに、院長の考え方が職場の雰囲気に強く表れるのが特徴です。
厚生労働省の「令和6年衛生行政報告例」によると、2024年末の柔道整復の施術所は50,924か所あります。店舗数の多い業界だからこそ、グループ院か個人院かで働き方が大きく変わります。
朝礼のあと、エリアマネージャーから「来月から新店舗の立ち上げをお願いしたい」と告げられる。その場で返事を求められても、すぐに答える必要はありません。
2024年4月から勤務地の「変更の範囲」の明示が必要に
2024年4月から、院が柔道整復師を雇うときには、雇い入れ直後の勤務地だけでなく、将来どこまで勤務地が変わる可能性があるかという「変更の範囲」も明示することが必要になりました。入社前に転勤の可能性を確認しやすくなっています。
以前は「最初にどこで働くか」だけが書かれていることが多く、入社後に初めて転勤の可能性を知るケースもありました。ルールの変更で、自分の契約を見直すきっかけにもなります。
労働条件明示のルール改正の内容
静岡労働局の案内によると、2024年4月からの改正で、労働契約を結ぶときと有期労働契約を更新するときに、就業場所と業務の「変更の範囲」を明示することが必要になりました。
- 雇い入れ直後の就業場所(例:〇〇整骨院 本院)
- 就業場所の変更の範囲(例:法人が運営する全店舗、など)
- 雇い入れ直後の業務と、業務の変更の範囲
自分の労働条件通知書を確認しよう
2024年4月以降に入社した方は、受け取った労働条件通知書に「変更の範囲」が書かれているはずです。それ以前に入社した方も、就業規則や雇用契約書で勤務地の決まりを確認しておきましょう。
書類を受け取っていない、どこにあるか分からないという場合は、院に写しをもらえるか相談してみてください。入社前に確認したい条件の全体像は、整骨院の内定承諾前に確認することでも解説しています。
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転勤・異動を打診されたときの対処法と入社前の確認点
転勤・異動を打診されたら、まず契約内容と異動の理由・条件を確認し、受けられない事情があるなら具体的に伝えて相談することが大切です。感情的に断るのではなく、事情と希望を整理して話し合いましょう。
異動は、新しい店舗での経験や昇格のチャンスになることもあります。断るか受けるかを決める前に、条件をしっかり聞いておくと後悔しにくくなります。
打診されたときに確認したいこと
異動の話があったら、次の順番で確認すると、判断に必要な情報がそろいます。
- 雇用契約書や就業規則で、勤務地の変更について何と書かれているか
- 異動の理由と、異動先の店舗の場所・通勤時間
- 異動の期間(一時的な応援か、長期の配属か)
- 給料や手当、通勤費、住宅補助など条件の変化
- 異動先での役割(スタッフか、分院長候補か)
分院長として異動を打診された場合の考え方は、整骨院で分院長を打診されたときの判断基準が参考になります。
家庭の事情があるときの伝え方
子育てや家族の介護などで転勤が難しい場合は、その事情を具体的に伝えて相談しましょう。育児・介護休業法では、転勤によって子育てや介護が難しくなる労働者がいる場合、事業主がその状況に配慮しなければならないと定められています。
出産や育児を控えている女性の柔道整復師は、産休・育休の確認ポイントもあわせて確認しておくと安心です。
入社前に確認しておきたいこと
これから整骨院に転職する方は、面接や見学のときに転勤の有無を確認しておきましょう。特にグループ院では、次の点を聞いておくと入社後のギャップを防げます。
- 店舗間の異動はどのくらいの頻度であるか
- 異動の範囲(通える範囲か、県外もあるか)
- 本人の希望はどの程度考慮されるか
- 勤務地を限定した働き方を選べるか
異動をきっかけに転職を考えるのもあり
異動の条件がどうしても合わないときは、無理に受け入れ続けるより、勤務地の決まった職場へ移ることを考えてもよいでしょう。通勤時間が片道30分延びるだけでも、1か月では大きな負担になります。
転職を考えるなら、異動の打診を受けた段階で求人を見始めると、焦らずに次の職場を選べます。今の院を辞めると決めたら、引き止めにあわないよう、伝え方と時期を事前に準備しておきましょう。
よくある質問
整骨院の異動を断ったらクビになりますか?
異動を断ったことだけを理由にすぐ解雇できるわけではありません。ただし、契約で勤務地の変更が認められていて、正当な理由なく断り続けると、処分の対象になるおそれはあります。断るときは、通勤や家庭の事情など具体的な理由を伝えて話し合いましょう。
入社時に「転勤なし」と言われたのに異動を命じられました。どうすればいいですか?
まず、雇用契約書や労働条件通知書に勤務地がどう書かれているかを確認しましょう。勤務地を限定する約束が書面にあれば、本人の同意なしの転勤は原則として認められません。口約束だけの場合は、そのときのやりとりの記録を集めて院と話し合います。
異動先の店舗が遠くて通えない場合はどうすればいいですか?
通勤時間や交通費の負担を具体的に伝え、通える範囲の店舗にしてもらえないか相談しましょう。住宅補助や通勤手当が出るかも確認しておくと判断しやすくなります。どうしても条件が合わない場合は、転職を考えるのも一つの選択です。
転勤のない整骨院を探すにはどうすればいいですか?
個人で1店舗だけを運営している院は、基本的に転勤がありません。グループ院でも、勤務地を限定した働き方を選べる場合があります。求人票の就業場所の「変更の範囲」を確認し、面接で異動の頻度や範囲を聞いておきましょう。
異動の打診はどのくらい前にされるものですか?
法律で決まった期限はなく、院によって違います。就業規則に異動の通知時期が書かれていることもあるので確認しましょう。急な異動で引っ越しや家族の予定の調整が難しい場合は、時期をずらしてもらえないか早めに相談することが大切です。
まとめ
整骨院の転勤・異動を断れるかどうかは、契約書や就業規則に書かれた勤務地の決まりで大きく変わります。2024年4月からは、勤務地の「変更の範囲」の明示も必要になりました。
- 勤務地が限定された契約なら、原則として同意なしの転勤はない
- 契約で認められていても、権利の濫用にあたる異動は問題になる
- 打診されたら、理由・期間・条件の変化を確認してから判断する
- 入社前に異動の頻度と範囲、変更の範囲を確認しておく
異動の話をきっかけに、自分がどこでどう働きたいかを考え直してみてください。
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