鍼灸院を辞めると研修費を返せと言われたら|違法になる基準

院長から研修費の請求書を差し出されて困惑する女性鍼灸師と「辞めるなら研修費を返せ?」の見出し
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「辞めたいと伝えたら、これまでの技術研修の費用を返してほしいと言われた」。鍼灸院を辞めようとした鍼灸師から、こうした相談を受けることがあります。

治療家コネクトは、鍼灸師や柔道整復師に特化した人材紹介サービスです。転職の相談を受けていると、「研修費の返還」を理由に退職をためらっている方に出会うことがあります。金額を聞かされると、辞めたい気持ちがあっても動けなくなってしまうものです。

この記事では、人材紹介の立場から見える業界の事情と、研修費の返還を求められたときに違法になる基準、給料からの天引きへの対処、相談先を、厚生労働省の情報をもとに解説します。

「研修費のことで辞められずにいる」という方は、治療家コネクトのLINE無料相談で話を聞くこともできます。

目次

鍼灸院で「研修費を返せ」と言われるのはなぜ?業界の事情

鍼灸院で研修費の返還を求められる背景には、「技術研修を売りに人を集め、辞められると費用が回収できない」という院側の事情があります。ただし、院の事情があっても、退職を理由に一方的にお金を払わせることは、労働基準法で原則として認められていません。

研修費の返還請求とは、勤務中に受けた研修やセミナーの費用を、退職するときに院が働いていた人に請求することです。入社時の誓約書に「○年以内に辞めたら研修費を返す」と書かせている院もあります。

鍼灸業界で研修費トラブルが起きやすい理由

鍼灸師が技術を身につけるには時間がかかるため、「研修制度が充実」「独自の技術を一から教えます」と、教育を強みにして採用する院が多くあります。そうした院ほど、教えた人が早く辞めることを嫌がる傾向があります。

厚生労働省の「令和6年衛生行政報告例」によると、2024年末に就業しているはり師は136,736人、はり及びきゅうを行う施術所は35,494か所で、前回より4.7%増えています。院が増えて人材の取り合いになるなかで、辞める人を引き止めようとする動きが出ることもあります。

よくある「研修費」の請求パターン

研修費の請求は、次のような形で持ち出されることが多くあります。

  • 入社時の誓約書に「3年以内に辞めたら研修費を全額返還」と書かれている
  • 退職を伝えたとたん、院内研修の「受講料」を計算した請求書を渡される
  • 最後の給料から、研修費の名目で差し引かれる
  • 外部セミナーの参加費を「立て替えていた」と言われる

閉院後に院長室へ呼ばれ、「あなたに教えた時間とお金をどうしてくれるんだ」と言われる。そんな場面で、言い返せずに頭が真っ白になってしまう方も少なくありません。

研修費の返還が違法になる基準|労働基準法第16条

「一定期間内に辞めたら研修費を返す」という約束は、労働基準法第16条が禁じる「損害賠償の予定」にあたり、違法・無効とされる可能性があります。特に、院の業務命令で受けた研修の費用を返させるのは、問題になりやすいケースです。

労働基準法第16条は、労働契約を守らなかったときの違約金や、損害賠償の金額をあらかじめ決めておく契約を禁じています。辞める自由を、お金でしばることを防ぐための決まりです。

厚生労働省の考え方

厚生労働省のQ&Aでは、会社が費用を負担した資格取得について、一定期間勤めずに辞めた場合にその費用を返させるのは、労働基準法第16条の「損害賠償予定の禁止」に該当する可能性があるとしています。

同じQ&Aでは、純粋なお金の貸し借りの契約として定め、一定期間働けば返済を免除するだけの形であれば、第16条違反にはならないとも説明されています。どちらにあたるかは、実態をもとに判断されます。

違法になりやすいケース・なりにくいケース

厚生労働省は、研修が業務命令によるものか、事業に必要な経費か、お金の貸し借りといえるか、返済方法が決まっているか、といった観点で総合的に判断するとしています。整理すると次のようになります。

観点 違法になりやすい 違法になりにくい
研修の性質 院の指示で受けた業務上の研修 本人の希望で受けた自己啓発の講座
費用の扱い 院の経費として払ったもの 本人への貸付として契約したもの
契約書 誓約書に「辞めたら返す」とだけある 金額・返済方法を定めた貸付契約書がある
研修中の扱い 勤務時間として給料が出ていた 勤務外に自分の意思で参加した

院内で先輩から施術を教わる日々のOJTは、仕事そのものです。その時間や手間を「研修費」として請求するのは、筋が通らないと考えてよいでしょう。

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研修費を請求されたときの対処法と相談先

研修費を請求されたら、その場で支払いやサインをせず、誓約書や契約書の内容を確認してから、労働基準監督署や専門家に相談するのが基本です。最後の給料から勝手に差し引かれた場合は、賃金の全額払いの原則にも反するおそれがあります。

請求されたからといって、すぐに払う必要はありません。焦って応じてしまうと、後から取り戻すのが難しくなります。

請求されたときの対応の手順

  1. その場で支払いの約束や、新しい書類へのサインをしない
  2. 入社時の誓約書や雇用契約書、研修の案内などを手元に集める
  3. 研修が業務命令か、勤務時間中か、費用を誰が払ったかを整理する
  4. 請求の内容を書面でもらい、やりとりを記録に残す
  5. 労働基準監督署や労働局の総合労働相談コーナーに相談する

給料からの天引きは別の問題にもなる

労働基準法第24条では、賃金は全額を支払うのが原則とされ、法律や労使協定で認められたもの以外を勝手に差し引くことはできません。研修費を最後の給料から一方的に差し引くのは、この原則に反するおそれがあります。

罰金や給料天引きのルールについては、整骨院の罰金・給料天引きが違法になるケースでも詳しく解説しています。鍼灸院でも同じ考え方があてはまります。

研修費を理由に辞めさせてもらえないとき

研修費の話を持ち出して退職を引き止められても、辞める自由がなくなるわけではありません。期間の定めのない雇用なら、退職の申し出から2週間がたてば雇用契約は終了すると民法で定められています。

強い引き止めにあっている場合は、ブラック鍼灸院で辞めるべきサインや、鍼灸院の円満な辞め方も参考にして、伝え方と時期を準備しておきましょう。

よくある質問

鍼灸院の誓約書に「辞めたら研修費を返す」とサインしてしまいました。払う必要がありますか?

サインしていても、必ず払わなければならないとは限りません。一定期間内に辞めたら研修費を返させる約束は、労働基準法第16条の損害賠償予定の禁止にあたり、無効とされる可能性があります。払う前に、労働基準監督署などに相談しましょう。

研修費を最後の給料から引かれたら取り戻せますか?

取り戻せる可能性があります。労働基準法第24条では賃金は全額払いが原則で、労使協定などがない限り、院が一方的に差し引くことはできません。給与明細と誓約書を手元に残し、院に返還を求めたうえで、応じない場合は労働基準監督署に相談しましょう。

外部セミナーの参加費も返さないといけませんか?

院の指示で参加したセミナーなら、業務上の研修と考えられ、返還の義務はないと判断されやすくなります。一方で、自分の希望で参加し、院とお金の貸し借りの契約を結んでいた場合は、返済が必要になることもあります。参加の経緯を整理しておきましょう。

研修費のことで院長ともめたくありません。どう伝えればいいですか?

感情的に反論するより、「誓約書の内容について、労働基準監督署に確認してからお返事します」と落ち着いて伝えるのがおすすめです。その場で結論を出さないことが大切です。やりとりはLINEやメールなど、記録が残る方法で行いましょう。

研修制度が充実した鍼灸院は避けたほうがいいですか?

避ける必要はありません。教育に力を入れている院は、鍼灸師にとって成長しやすい職場です。大切なのは、研修費の扱いを入社前に確認することです。誓約書に返還の決まりがないか、研修は勤務時間内か、費用は誰が負担するのかを面接で聞いておきましょう。

まとめ

鍼灸院を辞めるときに研修費の返還を求められても、すぐに払う必要はありません。一定期間内に辞めたら研修費を返させる約束は、労働基準法第16条で禁じられた損害賠償の予定にあたる可能性があります。

  • 研修費トラブルは、教育を売りに採用する院で起こりやすい
  • 業務命令で受けた研修の費用を返させるのは違法になりやすい
  • 給料からの一方的な天引きは、賃金全額払いの原則に反するおそれがある
  • 請求されたらその場で応じず、書類を集めて労働基準監督署に相談する

お金の話で辞める自由をしばられることはありません。一人で抱え込まず、早めに相談してください。

治療家コネクトでは、退職や転職のご相談を無料で承っています。研修費や引き止めで退職に悩んでいる方、教育がきちんとした鍼灸院を探したい方も、お気軽にご連絡ください。まずは相談だけでも大丈夫です。

院長から研修費の請求書を差し出されて困惑する女性鍼灸師と「辞めるなら研修費を返せ?」の見出し

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