「うちの鍼灸院には有給なんてないよ」「予約が入っているから休まれると困る」。そう言われて、有給休暇をあきらめている鍼灸師は少なくありません。
結論から言うと、鍼灸院で働く鍼灸師も、条件を満たせば有給休暇をもらえます。小さな鍼灸院でも例外ではありません。この記事では、有給がもらえる条件、院が守るべきルール、角を立てずに取る方法と相談先を、厚生労働省の調査や法律をもとに解説します。
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鍼灸院でも有給休暇は法律で必ず発生する
鍼灸院に雇われて働く鍼灸師には、勤続6か月と出勤率8割以上の条件を満たせば、有給休暇が法律上当然に発生します。院の規模や就業規則の有無は関係ありません。
有給休暇(年次有給休暇)とは、給料を減らされずに仕事を休める日のことです。労働基準法第39条で定められ、正社員だけでなく、条件を満たしたパートやアルバイトにも付与されます。
朝いちばんに予約表を見て「今月も休めそうにない」とため息をつく。少人数で回す鍼灸院では、こうした場面がよくあります。ただ、院が忙しいことは、有給をなくしてよい理由にはなりません。
有給がもらえる日数の目安
| 勤続年数 | 付与日数(フルタイム) |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
週の勤務日数が少ないパートの鍼灸師にも、勤務日数に応じた日数が付与されます。使わなかった有給は、翌年まで繰り越せます(時効は2年)。
全国の取得状況と比べてみる
厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、2024年の有給休暇の取得率は66.9%でした。労働者1人あたり平均18.1日が付与され、12.1日が取得されています。
同じ調査で「医療,福祉」の取得率は68.4%と、全体より少し高い水準です。年に1日も有給を取れていない場合は、業界の平均と比べても少ないと考えてよいでしょう。
鍼灸師は全国で増えています。厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によると、施術所などで働くはり師は136,736人で、2年前より4.0%増えました。人材を確保したい鍼灸院にとって、休みの取りやすさは求職者に選ばれるための条件になりつつあります。
鍼灸院が守るべき有給のルール
鍼灸院には、有給を年5日以上取らせる義務があり、「有給はない」という扱いは法律違反になります。院長が休む日を変えられるのは、業務の正常な運営を妨げる場合に限られます。
「うちは個人院だから関係ない」と思い込んでいる院長もいます。けれども、有給のルールは、スタッフを1人でも雇っていれば適用されます。
年5日の取得義務と罰則
2019年4月から、年10日以上の有給が付与される人には、院が年5日を確実に取らせることが義務になりました。違反した場合、労働基準法により30万円以下の罰金の対象になります。
この義務は、本人が申し出なくても院の側が守るものです。院が時季を指定して休ませる方法もあるため、「申請しづらいから取れない」という状態は本来起きないはずです。
「忙しいからダメ」はどこまで通るか
院長には、休む日を別の日に変えてもらう「時季変更権」があります。ただし使えるのは、その日に休まれると業務が回らない場合だけです。
「いつも忙しいから」「代わりがいないから」と毎回断ることや、有給そのものを認めないことは、時季変更権の範囲を超えています。別の日なら休めるのか、具体的な日を提案してもらうよう伝えてみましょう。
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鍼灸師が有給を取るための進め方
有給をスムーズに取るには、早めに日付を決めて申請し、記録を残すことが大切です。院の繁忙日を避けて相談すれば、院長も受け入れやすくなります。
「休みたい」と伝えるのは気が引けるものです。それでも、有給は労働者の権利です。体を休めることは、施術の質を保つことにもつながります。
角を立てずに申請する手順
- 給与明細や就業規則で、自分の有給の残り日数を確認する
- 予約が少ない曜日など、院の負担が小さい日を選ぶ
- 1か月ほど前に、院長へ口頭で相談する
- 申請書やメール、LINEなど、日付が残る形でも伝える
- 担当患者の予約は、院と相談して調整する
理由を細かく説明する義務はありません。「私用のため」で十分です。伝えた日付と返事を記録しておくと、後で話がこじれたときに役立ちます。
退職前の有給消化も同じ考え方
辞めると決めたときも、残っている有給は使えます。退職日までに消化できるよう、引き継ぎの予定と合わせて早めに院へ伝えましょう。
退職の進め方そのものは、鍼灸院の辞め方の記事で手順をまとめています。有給消化の注意点は、退職時の有給消化の記事も参考になります。
有給を使った日の給料は、通常の賃金などで支払われます。「有給の日は歩合がつかないから実質減給」というケースもあるため、歩合制の院では有給の日の計算方法も確認しておきましょう。
有給を認めない鍼灸院への対処と相談先
話し合っても有給を認めてもらえない場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。相談は無料で、名前を伏せたまま情報提供することもできます。
有給を何度申請しても断られる職場は、ほかの労働条件にも問題を抱えていることがあります。休みが取れない状態が続くと、心身の疲れから施術に集中できなくなるおそれもあります。
主な相談先
- 労働基準監督署:有給を認めないなどの法律違反について相談・申告できる
- 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局):労働問題全般を無料で相談できる
- 家族や同業の先輩:院長への伝え方を一緒に考えてもらう
相談に行くときは、申請した日付や院長の返答のメモ、給与明細、雇用契約書を持っていくと話が進みやすくなります。
労働基準監督署に相談したことが院に伝わるのが心配な場合は、その旨を相談の最初に伝えておくと安心です。どこまで対応してほしいのかを、自分で選びながら進められます。
有給が取れる職場を見分けるポイント
有給が取りやすい鍼灸院かどうかは、求人票の記載より、スタッフの実際の取得日数で判断するのが確実です。面接で「昨年は皆さん何日くらい取りましたか」と聞くと、職場の雰囲気がわかります。
ほかにも見ておきたいサインは、鍼灸院を辞めるべきサインの記事にまとめています。休みが取れない状態を我慢し続ける前に、職場を見直すきっかけにしてください。
よくある質問(FAQ)
鍼灸院でパート勤務ですが、有給はもらえますか?
もらえます。パートでも、6か月続けて働き、決められた日の8割以上出勤していれば有給が付与されます。週の勤務日数が少ない場合は、勤務日数に応じた日数になります。
「うちの院には有給がない」と言われました。本当ですか?
法律上、そのような扱いは認められていません。条件を満たした鍼灸師には、院の規模や就業規則の有無にかかわらず有給が発生します。まずは申請した記録を残し、認められない場合は労働基準監督署に相談しましょう。
有給を使う理由は院長に言わないといけませんか?
言う必要はありません。有給は理由を問わず使える休みなので、「私用のため」で十分です。ただし、院の予約状況を考えて早めに伝えると、日程の調整がしやすくなります。
有給を申請したら給料や評価を下げられました。違法ですか?
有給を取ったことを理由に賃金を減らすなど、不利益に扱わないよう労働基準法で定められています。減額された給与明細と申請の記録を保管し、労働基準監督署に相談しましょう。
辞める前に残っている有給を全部使ってもいいですか?
使えます。退職日までに残っている有給は、本人の希望で消化できます。引き継ぎの予定と合わせて、退職を伝えるときに有給消化の日程も相談しておくとトラブルを防げます。
まとめ|鍼灸師の有給は「ない」ではなく「使える」権利
鍼灸院で働く鍼灸師も、勤続6か月と出勤率8割以上の条件を満たせば有給休暇をもらえます。年10日以上付与される人には、院が年5日を取らせる義務もあります。
- 有給は院の規模や就業規則に関係なく発生する
- 2024年の全国の取得率は66.9%、医療・福祉は68.4%
- 申請は早めに、日付が残る形で行う
- 認めてもらえないときは労働基準監督署などに相談する
しっかり休める職場で働くことは、鍼灸師として長く活躍するための大切な条件です。
有給も取れない環境で無理を続けるより、休みを大切にできる鍼灸院を探すことも一つの選択です。
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