朝から夜まで鍼灸院のベッドの横に立ち続ける毎日。「もっと一人ひとりの患者さんと向き合える働き方はないだろうか」と考えたことはありませんか。
訪問鍼灸は、通院が難しい患者さんの自宅や施設に出向いて施術する働き方で、鍼灸師の転職先として選ぶ人が増えています。ただし、院内の施術とは求められる力が違うため、向き不向きを知ってから選ぶことが大切です。
訪問鍼灸とは、歩行が困難などの理由で通院できない患者さんのもとへ鍼灸師が訪問し、はり・きゅうの施術を行うサービスのことです。この記事では、訪問鍼灸の仕事内容と転職前に確認したいポイントを解説します。
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訪問鍼灸とは?鍼灸院との違いと仕事内容
訪問鍼灸の仕事は、患者さんの自宅や高齢者施設を回り、1人ずつ時間をかけて施術することです。鍼灸院のように患者さんが来るのを待つのではなく、こちらから出向く点が大きな違いです。
厚生労働省の「衛生行政報告例」(2024年末)によると、就業しているはり師は136,736人で、2年前より4.0%増えました。はり・きゅうを行う施術所も35,494か所と4.7%増えており、鍼灸の働き方は広がり続けています。
1日の仕事の流れ
訪問鍼灸の1日は、事業所での打ち合わせから始まり、車や自転車で患者さん宅を回るのが一般的です。1人あたりの施術時間は20〜30分程度で、移動を挟みながら1日に数件から十数件を訪問します。
- 朝:事業所で訪問ルートと患者さんの情報を確認する
- 日中:患者さん宅や施設を訪問し、施術と体調の確認を行う
- 夕方:事業所に戻り、施術記録や報告書を作成する
エレベーターのない団地の4階まで、施術道具を持って階段を上る。そんな日もあれば、施設で同じ建物の患者さんを続けて施術する日もあります。
施術のほかに、血圧や顔色、食欲など、患者さんの体調の変化を確認することも大切な仕事です。いつもと様子が違うと感じたときは、家族やケアマネジャーに伝え、必要に応じて医療につなぐ役割も担います。
鍼灸院との違いを比較
| 項目 | 鍼灸院 | 訪問鍼灸 |
|---|---|---|
| 患者さん | 来院できる幅広い年代 | 通院が困難な高齢者が中心 |
| 施術の場所 | 院内のベッド | 患者さんの自宅や施設 |
| 働く時間 | 夜や土日も営業する院が多い | 日中が中心で、土日休みの事業所も多い |
| 求められる力 | 施術技術と集客・接客 | 施術技術に加え、運転や体調変化への気づき |
表のとおり、訪問鍼灸は夜遅くまでの勤務が少ない一方で、移動や関係者との連携が仕事の大きな部分を占めます。どちらの負担が自分にとって軽いかを考えることが、転職先選びの第一歩です。
訪問鍼灸の収入の仕組みと2024年の制度改定
訪問鍼灸の多くは、健康保険を使った施術(療養費)で成り立っています。そのため、事業所の収入や働く人の給与は、国が定める療養費の料金や制度の影響を受けます。
保険を使うには医師の同意が必要
はり・きゅうで健康保険を使うには、医師の同意書が必要です。対象となるのは、神経痛、リウマチ、腰痛症、五十肩、頸腕症候群、頸椎捻挫後遺症などの病気です。
同意書の取得や更新の管理は、事業所が担当者を置いていることもあれば、鍼灸師自身が行うこともあります。医師やケアマネジャーとのやり取りがどのくらいあるかは、面接で確認しておきたい点です。
また、施術を続けるうちに患者さんの状態が変わることもあるため、施術の内容や経過を記録し、医師に報告する仕事もあります。記録をていねいに残せる人は、医師や事業所からの信頼も得やすくなります。
2024年10月から「訪問施術料」ができた
厚生労働省が示した2024年度の料金改定では、2024年10月から、定期的・計画的に患者さん宅へ訪問する施術について、施術料と往療料をまとめた「訪問施術料」が新しく設けられました。
同じ資料によると、同じ日に同じ建物で施術した患者さんが1人の場合、はり又はきゅうの一方を行う訪問施術料は1回3,910円です。同じ建物で10人以上を施術する場合は1回1,760円となり、施設で多くの人を続けて施術するほど、1人あたりの料金は下がる仕組みです。
一方、通院してきた患者さんへの施術料は1回1,610円です。訪問は移動の時間がかかる分、1人あたりの料金が高く設定されています。
こうした料金の仕組みによって、個人宅を中心に回る事業所と、施設を中心に回る事業所では、1日の訪問件数や働き方が大きく変わります。求人を見るときは、訪問先の内訳を確認しましょう。
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訪問鍼灸に向いている鍼灸師と求人の見極め方
訪問鍼灸に向いているのは、一人ひとりの患者さんとじっくり向き合いたい人や、体調のちょっとした変化に気づける人です。逆に、院内でたくさんの患者さんを施術して技術を磨きたい人には、物足りなく感じることもあります。
向いている人・向いていない人
- 向いている人:高齢者との会話が好き、家族やケアマネジャーとの連携が苦にならない、運転や移動が苦にならない
- 向いていない人:スポーツ鍼灸や美容鍼などの専門性を深めたい、1日に多くの施術をこなして腕を磨きたい
患者さんの家族から「最近よく眠れているみたいです」と声をかけられる。訪問鍼灸には、生活に寄り添う施術ならではのやりがいがあります。
訪問鍼灸の経験は、将来の独立にも役立ちます。訪問は大きな店舗を構えなくても始めやすいため、まずは事業所で経験を積み、医師やケアマネジャーとのつながりをつくってから独立する人もいます。
求人で確認したい5つのポイント
- 給与が固定給か、訪問件数に応じた歩合制か
- 1日の訪問件数の目安と、個人宅と施設の割合
- 移動手段(社用車・自家用車・自転車)とガソリン代や駐車場代の負担
- 同意書の管理や報告書作成の担当範囲
- 新人への同行研修の期間と内容
鍼灸師の転職でよくある後悔は、鍼灸師の転職で失敗しないためのよくある後悔と対策にまとめています。今の職場を辞めるべきか迷っている方は、ブラック鍼灸院で働き続けていいかの判断基準や、鍼灸師の転職タイミングの見極め方もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
訪問鍼灸は未経験の鍼灸師でも転職できますか?
できます。訪問鍼灸の事業所では、先輩の訪問に同行する研修を用意しているところが多くあります。ただし、一人で訪問する日が早く来る事業所もあるため、同行研修の期間と内容を面接で確認しておきましょう。
訪問鍼灸の給料は鍼灸院より高いですか?
事業所や給与体系によって異なり、一概には言えません。訪問件数に応じた歩合がある事業所では、件数が多いほど収入が増えることもあります。固定給と歩合の内訳や、移動にかかる費用の負担も合わせて比べましょう。
訪問鍼灸で運転免許は必要ですか?
必要な事業所が多いです。車で患者さん宅を回る事業所では、普通自動車免許が応募条件になっていることがほとんどです。都市部では自転車や公共交通機関で回る事業所もあるため、移動手段は求人票で確認しましょう。
訪問鍼灸とあん摩マッサージの訪問は何が違いますか?
施術の内容と、健康保険を使える対象が違います。訪問鍼灸は、はり・きゅうの施術で、神経痛や腰痛症などが主な対象です。訪問マッサージは、筋麻痺や関節拘縮などで医療上マッサージが必要な人が対象です。
訪問鍼灸の仕事はきついですか?
移動が多く、夏や冬の訪問は体力的にきついと感じることがあります。一方で、夜遅くまでの勤務が少なく、生活リズムを整えやすいという声もあります。自分にとってどちらの負担が大きいかで判断しましょう。
まとめ
訪問鍼灸は、通院が難しい患者さんに寄り添いながら、日中中心の生活リズムで働ける働き方です。一方で、移動や保険の手続きなど、院内の施術とは違う力も求められます。
- はり師は136,736人、施術所は35,494か所と、ともに増加している
- 保険を使う施術には医師の同意書が必要
- 2024年10月に訪問施術料ができ、料金の仕組みが変わった
- 求人では給与体系・訪問件数・移動手段・研修を確認する
気になる事業所があれば、見学や同行の機会をお願いし、実際の1日を体験してみるのもおすすめです。
自分が鍼灸師として大切にしたいことを考えたうえで、訪問鍼灸が合うかを判断しましょう。
治療家コネクトでは、退職や転職のご相談を無料で承っています。訪問鍼灸を含め、鍼灸師の資格を活かせる働き方に迷っている方も、お気軽にご相談ください。
まずは相談だけでも大丈夫です。話してみることで、気持ちや考えが整理できることもあります。



