「タイムカードは9時からなのに、8時半には来て朝礼と掃除をするのが決まり」「白衣への着替えやベッドの準備も、給料が出ない時間扱い」。開院前の時間が当たり前のように無給になっている整骨院は、少なくありません。
結論から言うと、院の指示で参加する朝礼や、決められた掃除・準備の時間は、労働時間にあたる可能性が高く、給料の支払い対象になります。この記事では、どこまでが労働時間になるのかを、判例と厚生労働省のガイドラインをもとに解説し、記録の残し方と相談先も紹介します。
「毎日の開院前の時間がもやもやする」という方は、治療家コネクトのLINE無料相談で話を聞くこともできます。
指示された朝礼や準備は労働時間にあたる
院長の指示で参加する朝礼や、決められた開院前の掃除・準備は、原則として労働時間にあたります。労働時間かどうかは、就業規則の書き方ではなく、院の指揮命令のもとにあったかどうかで判断されるためです。
労働時間とは、使用者の指揮命令のもとに置かれている時間のことです。最高裁判所は、2000年の三菱重工業長崎造船所事件の判決で、この考え方を示しました。作業服への着替えなどを事業所内で行うよう義務づけられていた時間も、労働時間にあたると判断しています。
まだ薄暗い朝、院のシャッターを開けて床を拭き、ホットパックの電源を入れる。毎日の当たり前の作業でも、それが院の指示による仕事なら、きちんと賃金が支払われるべき時間です。
厚生労働省のガイドラインの考え方
厚生労働省の労働時間の適正な把握のためのガイドライン(2017年)では、労働時間として扱う例として、次のようなものが挙げられています。
- 使用者の指示で、業務に必要な準備行為(着用を義務づけられた制服への着替えなど)や、業務終了後の後始末(清掃など)を事業場内で行った時間
- 使用者の指示があればすぐに業務に従事することが求められ、待機している時間(いわゆる手待ち時間)
- 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の時間
「自主的な参加」でも労働時間になることがある
院が「朝礼は自由参加」と言っていても、参加しないと注意される、評価が下がるといった実態があれば、事実上の強制として労働時間と判断される可能性があります。名目ではなく実態で判断される点が大切です。
反対に、本当に自由で、参加しなくても何の不利益もない勉強会などは、労働時間にあたらないこともあります。自分の職場がどちらに近いかを考えてみましょう。
整骨院で労働時間になりやすい開院前の作業
整骨院の開院前には、朝礼・掃除・着替え・施術の準備など、毎日決まった作業があることが多く、それらが院の指示で行われているなら労働時間になりやすいと言えます。
1日15分や30分でも、毎日積み重なれば大きな時間になります。たとえば1日30分を月22日続ければ、月に11時間です。この分の賃金が払われていないとしたら、決して小さな額ではありません。
労働時間になりやすい作業の例
| 作業 | 労働時間になりやすい場合 |
|---|---|
| 朝礼・ミーティング | 参加が義務、または不参加で注意・評価に影響する |
| 開院前の掃除 | 担当や手順が決められている |
| 白衣への着替え | 院内での着替えが義務づけられている |
| 施術機器・ベッドの準備 | 開院までに終えるよう指示されている |
| 予約の確認・電話対応 | 開院前から対応を求められている |
賃金不払いは珍しいことではない
厚生労働省の発表によると、2024年に全国の労働基準監督署が扱った賃金不払事案は22,354件、対象労働者は185,197人、金額は172億1,113万円でした。開院前や閉院後の作業時間が払われていないケースも、こうした不払いにつながります。
閉院後の練習や片付けについては、整骨院の居残り練習の記事でくわしく解説しています。
💬 一人で悩まなくて大丈夫です
開院前や閉院後の作業が無給で悩んでいる方に、労働時間をきちんと管理している整骨院の探し方を無料でご案内しています。LINEで相談してみる
開院前の時間を記録して確認する方法
開院前の作業が無給になっていると感じたら、まずは毎日の出勤時刻と作業内容を記録し、院の説明と比べることから始めましょう。記録があれば、院との話し合いでも、外部への相談でも役立ちます。
記録は、その日のうちに、同じ形式でつけることが大切です。後からまとめて書いた記録より、毎日のメモのほうが信用されやすくなります。
記録の手順
- 院に着いた時刻を、スマホのメモなどに記録する
- 朝礼・掃除・着替えなど、開院前にした作業を書く
- タイムカードを押した時刻もあわせて記録する
- 朝礼や掃除を指示されたLINEや掲示物があれば保存する
- 給与明細と照らし合わせ、払われている時間を確認する
同じガイドラインでは、労働時間の確認は、使用者がみずから確認するか、タイムカードなどの客観的な記録で行うことが原則とされています。タイムカードを「開院時刻に押す」決まりになっていて実際の出勤時刻と大きくずれる場合は、記録の付け方そのものを見直してもらう余地があります。
院に確認するときの伝え方
「開院前の朝礼と掃除の時間は、勤務時間に含まれていますか」と、事実を確認する形で聞くと角が立ちにくくなります。いきなり「違法だ」と伝えると、話し合いが難しくなることがあります。
サービス残業全般の考え方は、整骨院のサービス残業の記事も参考にしてください。
改善しないときの相談先と職場選び
院と話し合っても開院前の時間が労働時間として扱われない場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。未払いの賃金は、2020年4月以降に支払日が来た分なら3年間さかのぼって請求できます。
ただ、在職中に院と対立するのは負担が大きいものです。働き続けるか、職場を変えるかも含めて考えましょう。
主な相談先
- 労働基準監督署:賃金不払いなどの法律違反について相談・申告できる
- 総合労働相談コーナー:労働問題全般を無料で相談できる
- 弁護士・法テラス:未払い賃金の請求を検討したいとき
相談に行くときは、毎日の記録のほか、就業規則や雇用契約書に書かれた始業時刻、給与明細を持っていくと話が早く進みます。同じ職場の同僚も同じ扱いを受けている場合は、その状況もメモしておきましょう。
転職先で確認したいこと
見学や面接では、「皆さんは何時ごろに出勤されていますか」「朝礼は勤務時間に含まれますか」と聞いてみましょう。始業時刻と実際の出勤時刻の差が大きい院は、無給の作業が多い可能性があります。
労働時間の上限については、36協定と残業の上限の記事で解説しています。
よくある質問(FAQ)
整骨院の朝礼は労働時間に入りますか?
院の指示で参加する朝礼は、原則として労働時間にあたります。「自由参加」とされていても、参加しないと注意される、評価が下がるといった実態があれば、事実上の強制として労働時間と判断される可能性があります。
開院前の掃除が当番制で決まっています。給料は出るべきですか?
担当や手順が院の指示で決められている掃除は、労働時間にあたる可能性が高く、賃金の支払い対象になります。厚生労働省のガイドラインでも、指示された準備や後始末は労働時間として扱う例に挙げられています。
白衣への着替えの時間も労働時間ですか?
院内での着替えを義務づけられている場合は、労働時間にあたる可能性があります。最高裁判所も、事業所内での作業服への着替えを義務づけられていた時間を労働時間と判断しています。
タイムカードを押す前の作業分の給料は、さかのぼって請求できますか?
2020年4月以降に支払日が来た賃金であれば、3年間さかのぼって請求できます。出勤時刻と作業内容の記録や、指示があったことがわかるLINEなどを保存しておきましょう。
院長に開院前の時間のことを聞いたら気まずくなりませんか?
「朝礼の時間は勤務時間に含まれますか」と、事実を確認する形で聞けば角が立ちにくくなります。それでも改善しない場合は、労働基準監督署などの外部の窓口に相談する方法もあります。
まとめ|開院前の時間も大切な労働時間
院の指示で参加する朝礼や、決められた開院前の掃除・準備は、原則として労働時間にあたります。労働時間かどうかは、院の指揮命令のもとにあったかどうかという実態で判断されます。
- 朝礼・掃除・着替え・準備は、指示があれば労働時間になりやすい
- 「自由参加」でも、実態が強制なら労働時間と判断されることがある
- 出勤時刻と作業内容を毎日記録しておく
- 未払いの賃金は3年間さかのぼって請求できる
毎日の小さな時間も、積み重なれば大きな差になります。働いた時間がきちんと評価される職場を選びましょう。
無給の時間が当たり前になっている職場に疑問を感じたら、気軽にご相談ください。
治療家コネクトでは、退職や転職のご相談を無料で承っています。「まだ辞めるか決めていない」「話を聞いてほしいだけ」という段階でも、まずは相談だけでも大丈夫です。無理に転職をすすめることはありませんので、気軽にLINEからご連絡ください。



