「完全歩合だから、指名が取れれば月50万円も夢じゃない」「固定給はないけど、そのぶん歩合率が高いよ」。鍼灸院の求人や面接で、こうした説明を受けたことはありませんか。
治療家コネクトは、柔道整復師・鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師などの治療家に特化した人材紹介サービスです。転職相談では、「完全歩合の鍼灸院に入ったら、患者さんが少ない月は手取りが10万円を切った」という声を聞くことがあります。夢のある言葉の裏に、働く側にとって大きなリスクが隠れていることがある業界の現実です。
この記事では、完全歩合の鍼灸院について、労働基準法の「保障給」のルール、2026年度の最低賃金、業務委託との違い、求人を見るときに確認したいポイントを、厚生労働省の情報をもとに解説します。
「歩合の給料が不安定で生活が苦しい」という方は、治療家コネクトのLINE無料相談で話を聞くこともできます。
完全歩合の鍼灸院は違法?雇用なら保障給が必要
雇用契約で働く鍼灸師に「完全歩合」で給料を払うこと自体はできますが、労働基準法第27条により、院は労働時間に応じた一定額の賃金(保障給)を保障しなければなりません。さらに、時給に直した金額が最低賃金を下回ることは認められません。
歩合制(出来高払制)とは、施術した人数や売上などの成果に応じて給料が決まる仕組みのことです。固定給がまったくない形を、求人では「完全歩合」と呼ぶことが多くあります。
労働基準法第27条の保障給
厚生労働省のQ&Aによると、歩合給制では、実際に労働した時間に応じて一定の賃金を保障しなければならないとされています。保障給の金額は法律で決まっていませんが、通達では少なくとも平均賃金の6割程度を保障することが妥当とされています。
同じQ&Aでは、保障給を定めていないだけでも法違反になると解されるため、就業規則や労働契約で定めておく必要があると説明されています。なお、固定給が賃金総額のおおむね6割以上を占める場合は、この規定は適用されません。
最低賃金も必ず守られる
歩合給にも最低賃金法が適用されます。同じQ&Aでは、歩合給だけの場合は、歩合給の額を総労働時間で割って1時間あたりの金額を出し、最低賃金と比べると説明されています。
厚生労働省の発表によると、2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,177円で、前年度から56円引き上げられました。最高額は1,280円、最低額は1,085円で、2026年10月1日から12月2日までの間に順次発効されます。
たとえば月に200時間働いた場合、全国加重平均で計算すると、歩合給の合計が約23万5千円を下回ると最低賃金に届かない計算になります。患者さんが少なかった月でも、この水準を下回ることは許されません。
待機時間も労働時間にあたる
患者さんが来るのを院内で待っている時間は、すぐに施術に入れるよう待機している「手待時間」として、労働時間にあたるのが原則です。歩合給を時給に直すときも、待機時間を含めた総労働時間で計算します。
「施術していない時間は給料の対象外」という説明は、雇用契約であれば正しくありません。待機の時間が長い院ほど、時給に直した金額が最低賃金を下回りやすくなるので注意しましょう。
完全歩合の求人に潜む業界の裏側
完全歩合の求人には、患者さんの少ない時期の収入減を働く人に押し付ける仕組みになっているものがあります。また、雇用ではなく「業務委託」の形にして、保障給や最低賃金のルールを外そうとするケースもあります。
雨の日が続いた月、予約表は空きが目立ち、待機していても1円にもならない。それでも開院から閉院まで院にいるよう言われる。そんな働き方では、歩合率が高くても生活は安定しません。
よくある「完全歩合」の落とし穴
| 求人の説明 | 実際によくあること |
|---|---|
| 月50万円以上も可能 | 指名の多いごく一部の人の例で、平均はずっと低い |
| 歩合率50% | 材料費や家賃分などを差し引いた後の売上に対する率だった |
| 自由な働き方 | 実際には開院から閉院まで待機を求められる |
| 業務委託で高収入 | 社会保険や有給休暇がなく、保障給もない |
「業務委託」でも実態が雇用なら守られる
業務委託契約では、労働基準法の保障給や最低賃金は原則として適用されません。しかし、勤務時間や働き方を細かく指示されているなど、実態が雇用と同じであれば、労働者として守られる可能性があります。
山形労働局の案内によると、厚生労働省は2024年11月1日から全国の労働基準監督署に「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」を設けています。業務委託の注意点は鍼灸師の業務委託で契約前に確認したいことでも解説しています。
歩合の計算方法を説明しない院は要注意
歩合給の仕組みが複雑で、毎月の計算方法を説明してもらえない院もあります。どの売上に何%がかかっているのか分からないままでは、給料が正しいかどうかを確かめられません。
面接や入社時に、歩合の計算式を書面でもらえるか確認しましょう。口頭で「だいたいこのくらい」としか説明しない院は、後から条件を変えられても証明が難しくなります。
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歩合制の鍼灸院の求人で確認したいこと
歩合制の求人を見るときは、保障給や固定給の有無、歩合の計算方法、平均的なスタッフの月収、待機時間の扱いを、必ず数字と書面で確認しましょう。説明があいまいな院は避けるのが安全です。
「頑張れば稼げる」という言葉だけで判断せず、うまくいかなかった月にいくらもらえるのかを確かめることが、生活を守るための大切なポイントです。
応募前と面接で確認する手順
- 雇用契約か業務委託契約かを確認する
- 固定給や保障給があるか、あるならいくらかを確認する
- 歩合率が何に対する割合なのか(売上全体か、経費を引いた後か)を聞く
- 入社1年目のスタッフの平均的な月収を聞く
- 患者さんがいない待機時間の扱いと、社会保険の有無を確認する
給料の明細で最低賃金を確かめる方法
すでに歩合制で働いている方は、毎月の給料を実際に働いた時間で割ってみましょう。1時間あたりの金額が、働いている都道府県の最低賃金を下回っていれば、院に確認を求めることができます。
固定給と歩合の違いをさらに知りたい方は、柔道整復師向けに解説した歩合制の整骨院と固定給の違いも参考になります。
よくある質問
完全歩合の鍼灸院で働くのは違法ですか?
雇用契約で働く場合、完全歩合そのものはすぐに違法とは限りませんが、労働基準法第27条により労働時間に応じた保障給が必要です。また、時給に直した金額が最低賃金を下回ることは認められません。保障給の定めがない場合は法違反になると解されています。
歩合制で給料が最低賃金を下回った月はどうなりますか?
雇用契約で働いている場合、最低賃金との差額を受け取る権利があります。給料を実際に働いた時間で割り、都道府県の最低賃金と比べてみましょう。下回っている場合は院に確認を求め、改善されなければ労働基準監督署に相談できます。
業務委託の鍼灸師には最低賃金は関係ないのですか?
本来の業務委託であれば、最低賃金は原則として適用されません。ただし、勤務時間を決められているなど実態が雇用と同じなら、労働者として最低賃金などで守られる可能性があります。迷う場合は、労働基準監督署の相談窓口で確認できます。
歩合制の鍼灸院を選ぶときに一番大切なことは何ですか?
うまくいかなかった月にいくら受け取れるかを確認することです。固定給や保障給があるか、平均的なスタッフの月収はいくらかを数字で聞きましょう。最高額の例ではなく、普通の月の手取りで生活できるかどうかで判断するのが安全です。
歩合制の給料でも残業代はもらえますか?
はい、雇用契約で働く場合は、歩合給でも時間外労働や休日労働の割増賃金を受け取れます。歩合給の総額を総労働時間で割った金額をもとに、割増分を計算するのが基本です。閉院後の片付けや練習で残っている時間がある方は、記録を残しておきましょう。
まとめ
完全歩合の鍼灸院でも、雇用契約であれば労働基準法の保障給と最低賃金のルールが適用されます。高収入の言葉だけでなく、収入が少ない月の保障を確認することが大切です。
- 歩合給制では、労働時間に応じた保障給が必要(平均賃金の6割程度が目安)
- 2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円
- 業務委託でも、実態が雇用なら労働者として守られる可能性がある
- 求人では保障給・歩合の計算方法・平均月収を数字で確認する
安定した収入があってこそ、落ち着いて技術を磨けます。
治療家コネクトでは、退職や転職のご相談を無料で承っています。収入が安定した鍼灸院で働きたい方、歩合制の給料に不安を感じている方も、お気軽にご連絡ください。まずは相談だけでも大丈夫です。



