「退職金の決まりを知りたいのに、就業規則を見せてもらえない」「そもそも、うちの整骨院に就業規則はあるのだろうか」。働くうえでのルールがわからないまま、不安を抱えている柔道整復師は少なくありません。
結論から言うと、就業規則がある整骨院には、それをスタッフが見られる状態にしておく義務があります。この記事では、就業規則の作成・周知の義務、見せてもらうための頼み方、規則がない小さな院で確認すべき書類を、労働基準法をもとに解説します。
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整骨院の就業規則はスタッフが見られるのが原則
就業規則がある整骨院は、それをスタッフがいつでも見られる状態にしておく必要があります。「見せられない」「院長の許可がないとダメ」という扱いは、労働基準法の周知義務に反するおそれがあります。
就業規則とは、労働時間・休日・給与・退職などの職場のルールをまとめた文書のことです。労働基準法第106条では、就業規則を作業場の見やすい場所に掲示する、書面で渡す、パソコンなどでいつでも見られるようにする、といった方法で周知することが定められています。
休憩中に「有給って何日あるんですか」と先輩に聞いても、「院長に聞いて」としか返ってこない。こうした職場では、ルールがあっても共有されていないことがあります。
周知されていない就業規則の効力
労働契約法第7条では、合理的な内容の就業規則が労働者に周知されていれば、その内容が労働契約の内容になるとされています。裏を返せば、周知されていない就業規則は、労働者を拘束する根拠として弱くなります。
たとえば、退職時に「規則で3か月前に言う決まりだ」と急に言われても、その規則を一度も見せてもらっていなければ、そのまま従う必要があるとは限りません。
周知義務違反には罰則もある
就業規則の周知義務に違反した場合、労働基準法第120条により30万円以下の罰金の対象になります。就業規則を見せることは、院の好意ではなく法律上の義務です。
もちろん、すぐに罰則の話をする必要はありません。まずは「就業規則を確認したい」と穏やかに頼むところから始めましょう。
就業規則の作成義務がある整骨院・ない整骨院
就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務になるのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場です。スタッフが10人未満の整骨院には作成義務がないため、就業規則そのものがない場合もあります。
整骨院は小規模な職場が多い業界です。厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によると、2024年末の柔道整復の施術所は50,924か所、施術所で働く柔道整復師は78,666人でした。単純に割ると、1か所あたりの柔道整復師は約1.5人です。
規模で変わる院の義務
| 院の規模 | 就業規則 | 働く人が確認できるもの |
|---|---|---|
| 常時10人以上 | 作成・届出・周知の義務あり | 就業規則の閲覧・写しの交付 |
| 10人未満 | 作成義務はない(作った場合は周知が必要) | 労働条件通知書・雇用契約書 |
「10人」は1つの院ごとに数えるのが基本で、受付スタッフやパート・アルバイトも含みます。グループで複数の院を運営している場合は、院ごとに状況が違うこともあります。
就業規則がなくても労働条件の明示は必要
就業規則がない小さな整骨院でも、雇い入れるときに賃金・労働時間・休日などの労働条件を書面で示すことは、労働基準法第15条で義務づけられています。これを労働条件通知書といいます。
就業規則がない院で働いている人は、入職時にもらった労働条件通知書や雇用契約書が、自分の働く条件を確認するいちばん大事な書類になります。
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就業規則を見せてもらうための頼み方
就業規則を見たいときは、目的を簡潔に伝え、閲覧や写しの交付を穏やかに頼むのが基本です。院長と対立する形にせず、「確認したいことがある」という姿勢で話すと受け入れられやすくなります。
就業規則を見たいと言うと、「辞めるつもりなのか」と身構えられることもあります。ですが、ルールを確認するのは働く人として当然のことです。
頼むときの手順
- 確認したい項目(有給・退職・手当など)を決めておく
- 院長や事務担当に「就業規則を確認したい」と伝える
- 掲示場所や保管場所を教えてもらう、または写しをもらう
- 見せてもらえない場合は、メールなど記録が残る形で再度お願いする
- それでも難しい場合は、労働基準監督署に相談する
伝え方の例
「お忙しいところすみません。有給休暇の扱いを正しく知っておきたいので、就業規則を確認させていただけますか。写しをいただけると助かります」。このように、理由を一言添えると自然です。
見せてもらえたら、気になる部分はスマホで撮影するか、メモを取っておきましょう。後で読み返せるようにしておくと安心です。
院長が忙しくて話す時間が取れない場合は、「お手すきのときに就業規則を見せていただけますか」と短いメモやLINEで伝える方法もあります。急ぎでないことを示しておけば、相手も対応しやすくなります。
就業規則で確認しておきたい項目
就業規則を見るときは、労働時間・休日・給与・退職の4つを中心に確認すると、自分の働き方に関わるルールを効率よく把握できます。特に退職と退職金の規定は、辞めるときに大きく影響します。
就業規則は文字が多く、すべてを読み込むのは大変です。まずは自分が気になる項目から読み、わからない言葉はメモしておきましょう。
チェックしておきたい項目
- 始業・終業時刻、休憩時間、残業の扱い
- 休日の日数、有給休暇の取り方
- 給与の計算方法、手当、昇給・賞与の決まり
- 退職の申し出の時期、退職金の有無と条件
- 服務規律や懲戒の内容
退職金の規定については、整骨院の退職金の記事でくわしく解説しています。給与明細の確認も大切なので、給与明細がもらえない整骨院の記事もあわせてご覧ください。
就業規則が変更されることもあります。院から「規則を変えた」と言われたら、どこがどう変わったのかを確認し、変更後の内容も見せてもらいましょう。
実態と規則が違うときは記録を残す
就業規則には「休憩60分」と書いてあるのに実際は取れない、といったずれがある場合は、その実態を記録しておきましょう。規則と実態の違いは、相談するときの大事な材料になります。
ルールが守られない職場で一人で抱え込むのはつらいものです。困ったときは、整骨院の相談先の記事も参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
整骨院に就業規則を見せてと頼んだら断られました。違法ですか?
就業規則がある院では、スタッフがいつでも見られるようにする周知義務があります。断ることは労働基準法第106条に反するおそれがあり、違反は30万円以下の罰金の対象です。記録が残る形で再度頼み、難しければ労働基準監督署に相談しましょう。
スタッフが5人の小さな整骨院でも就業規則は必要ですか?
作成と届出が義務になるのは、常時10人以上の労働者がいる事業場です。10人未満の院には作成義務はありません。ただし作っている場合は周知が必要で、作っていなくても労働条件を書面で示す義務はあります。
就業規則がない整骨院では、何を見れば労働条件がわかりますか?
入職時にもらった労働条件通知書や雇用契約書を確認しましょう。賃金・労働時間・休日などは、就業規則がなくても書面で示すことが法律で義務づけられています。手元にない場合は、院に交付を求めましょう。
就業規則を撮影してもいいですか?
自分の労働条件を確認する目的であれば、撮影やメモをしておくのは自然なことです。院が写しの交付に応じてくれる場合もあります。外部に広めることは避け、自分の確認用として保管しましょう。
就業規則に「退職は3か月前に申し出る」と書いてあります。従わないといけませんか?
期間の定めのない雇用であれば、民法上は申し入れから2週間で退職できるとされています。とはいえ、引き継ぎを考えると、規則を参考に早めに伝えるのが円満です。強く引き止められたら、相談窓口を利用しましょう。
まとめ|就業規則は働く人が確認できるルール
就業規則がある整骨院には、スタッフがいつでも見られるようにする周知義務があります。常時10人以上の院には作成と届出の義務もあり、10人未満の院でも労働条件を書面で示す義務があります。
- 就業規則の周知は院の義務。違反は30万円以下の罰金の対象
- 周知されていない規則は、労働者を拘束する根拠として弱い
- 規則がない院では、労働条件通知書や雇用契約書を確認する
- 見せてもらえないときは、記録を残して相談する
職場のルールを知ることは、自分の働き方を守るための第一歩です。
ルールがあいまいな職場で不安を抱え続けるより、労働条件がはっきりした整骨院を探すことも一つの選択です。
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