「院長から、来月から別の会社が経営すると言われた」「新しいオーナーになったら、給料や休みが変わるのでは」。整骨院の経営者が変わると聞いて、自分の雇用がどうなるのか不安になる柔道整復師は少なくありません。
結論から言うと、経営者が変わっても、働く人の同意なく給料などの労働条件を一方的に下げることは、原則として認められていません。この記事では、整骨院の経営者が変わるパターンごとの雇用の扱いと、条件変更を求められたときの対応を、法律をもとに解説します。
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経営者が変わっても労働条件は一方的に下げられない
整骨院の経営者が変わっても、給料や休日などの労働条件を、働く人の同意なく一方的に不利に変えることは原則としてできません。労働契約法第8条で、労働条件の変更は労使の合意によるとされているためです。
経営者が変わるとは、院の持ち主や運営する会社が別の人や会社に移ることです。整骨院では、院長の引退による引き継ぎや、グループ会社への売却などで起こります。
朝礼で「来月から〇〇グループの院になります」と発表され、スタッフ同士で顔を見合わせる。説明が少ないまま話が進むと、不安ばかりがふくらみます。まずは、どんな形で経営が変わるのかを確認しましょう。
就業規則での不利益変更にも制限がある
労働契約法第9条では、就業規則を変えることで、働く人に不利益な労働条件に変更することは、原則としてできないとされています。例外として認められるのは、変更の内容が合理的で、働く人に周知されている場合に限られます(第10条)。
合理的かどうかは、不利益の大きさ、変更の必要性、内容の妥当さ、労働組合などとの交渉の状況などを総合して判断されます。「経営者が変わったから」というだけで、大幅な減給が当然に認められるわけではありません。
業界の状況も知っておく
厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によると、2024年末の柔道整復の施術所は50,924か所で、2年前からほぼ横ばいでした。数が増えない中で、院の引き継ぎやグループ化が進む場面もあります。
経営者が変わること自体は、必ずしも悪いことではありません。経営が安定し、設備や教育が整うこともあります。大切なのは、自分の労働条件がどう扱われるかを確かめることです。
経営が変わるパターンと雇用の扱い
経営者が変わるときの雇用の扱いは、「会社ごと持ち主が変わる」のか「院の事業だけが別の会社に移る」のかで大きく違います。どちらなのかを、院長や新しい経営者に確認しましょう。
説明があいまいなときは、「私の雇用契約は、どの会社との契約になりますか」と具体的に聞くと、答えがはっきりしやすくなります。
主なパターンの比較
| パターン | 雇用主 | 雇用契約の扱い |
|---|---|---|
| 株式の譲渡(法人の持ち主が変わる) | 同じ法人のまま | 契約はそのまま続く |
| 事業譲渡(院の事業を別の会社に売る) | 新しい会社に変わる | 引き継ぐには本人の同意が必要 |
| 会社分割 | 新しい会社に変わる | 労働契約承継法のルールで引き継がれる |
| 個人院の院長交代 | 新しい院長(個人)に変わる | 新しい院長と契約を結び直すことが多い |
事業譲渡では本人の同意が必要
民法第625条では、使用者は、働く人の承諾がなければ、雇用契約上の権利を第三者に譲り渡すことができないとされています。事業譲渡で新しい会社に移るときは、あなたの同意が必要です。
新しい会社と契約を結び直す場合は、給料・休日・勤続年数の扱い・退職金などが前と同じかどうかを、書面で確認してからサインしましょう。
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個人で開業している院の院長が交代する場合は、新しい院長が雇い主になるため、雇用契約を結び直すのが一般的です。このときも、雇い入れの際には給料や労働時間などの労働条件を書面で示すことが、労働基準法で義務づけられています。
条件変更を求められたときの対応
経営者が変わって条件の変更を求められたら、すぐにサインせず、変更の内容を書面でもらい、前の条件と比べてから判断することが大切です。納得できない変更には、同意しない選択もできます。
「サインしないと働けなくなる」と言われると、焦ってしまうものです。けれども、急いで同意すると、後から取り消すのは難しくなります。
対応の手順
- 今の雇用契約書・労働条件通知書・給与明細を手元にそろえる
- 新しい条件を書面でもらい、前の条件と項目ごとに比べる
- 不利になる点があれば、理由の説明を求める
- 納得できない点は、すぐにサインせず持ち帰って考える
- 判断に迷うときは、総合労働相談コーナーなどに相談する
話し合いの内容は、日時・相手・話した内容をメモに残しておきましょう。後で「そんな約束はしていない」と言われたときに、自分の身を守る材料になります。
特に確認したい項目
- 基本給・手当・歩合の計算方法
- 勤続年数が引き継がれるか(有給休暇や退職金に影響する)
- 勤務地や配属先が変わる可能性
- 有期契約の場合、契約期間や更新の扱い
勤続年数がリセットされると、有給休暇の日数や退職金の計算に影響します。退職金の考え方は整骨院の退職金の記事で、有期契約の扱いは無期転換ルールの記事で確認できます。
経営が変わる院で働き続けるか考える
経営者が変わったことをきっかけに、働き続けるか転職するかを考えるのは自然なことです。新しい方針が自分の働き方に合うかどうかを、数か月かけて見極めるのも一つの方法です。
新しい経営者のもとで設備が整い、休みが取りやすくなることもあれば、ノルマや異動が増えることもあります。実際に変わったことを記録しておくと、判断しやすくなります。
見極めるときのポイント
- 新しい経営者が、方針や条件を丁寧に説明してくれるか
- 給料の支払いや社会保険の手続きが、きちんと行われているか
- 施術方針やノルマが、自分の考える治療と合っているか
- スタッフの退職が急に増えていないか
辞めると決めたときの進め方
経営の変化をきっかけに辞めると決めた場合も、通常の退職と同じように、引き継ぎの期間を考えて早めに伝えましょう。経営の引き継ぎの時期は院も忙しいため、丁寧に話すことが円満退職につながります。
強いプレッシャーや嫌がらせを受けた場合は、整骨院のパワハラの相談先を参考に、一人で抱え込まずに相談してください。
よくある質問(FAQ)
整骨院のオーナーが変わったら、給料を下げられることはありますか?
働く人の同意なく、給料を一方的に下げることは原則としてできません。就業規則の変更で下げる場合も、内容が合理的で周知されていることが必要です。変更を求められたら、書面でもらって前の条件と比べましょう。
事業譲渡で新しい会社に移るよう言われました。断れますか?
断ることができます。民法では、働く人の承諾なく雇用契約上の権利を第三者に譲ることはできないとされています。ただし、断った場合に元の会社で働き続けられるかは状況によるため、事前に確認しておきましょう。
経営者が変わったら有給休暇の日数はリセットされますか?
株式の譲渡のように雇用主が同じ法人なら、勤続年数も有給も引き継がれます。事業譲渡などで契約を結び直す場合は、勤続年数を引き継ぐかを書面で確認しましょう。引き継がれないと、有給の日数が減ることがあります。
新しい労働条件の書類に、すぐサインするよう言われました。
すぐにサインする必要はありません。書面を持ち帰り、前の条件と比べてから判断しましょう。納得できない点があれば理由の説明を求め、迷うときは総合労働相談コーナーなどに相談するのがおすすめです。
経営が変わったのを機に辞めたいです。いつ伝えればいいですか?
引き継ぎの期間を考えて、できれば1〜2か月前には伝えるのが円満です。期間の定めのない雇用であれば、法律上は申し入れから2週間で退職できます。経営の移行期は院も忙しいため、丁寧に話しましょう。
まとめ|経営者が変わっても自分の条件を確かめて判断しよう
整骨院の経営者が変わっても、給料などの労働条件を同意なく一方的に下げることは、原則として認められていません。就業規則による不利益な変更も、合理性と周知が必要です。
- 株式の譲渡なら雇用主は同じ。事業譲渡なら本人の同意が必要
- 条件変更は書面でもらい、前の条件と比べてから判断する
- 勤続年数の引き継ぎは、有給や退職金に影響する
- 新しい方針が合うかを見極め、必要なら転職も考える
変化の時期こそ、自分の働き方を見直すチャンスです。
経営の変化で働き方に迷ったときは、条件の比べ方も含めて一緒に考えてみませんか。
治療家コネクトでは、退職や転職のご相談を無料で承っています。「まだ辞めるか決めていない」「話を聞いてほしいだけ」という段階でも、まずは相談だけでも大丈夫です。無理に転職をすすめることはありませんので、気軽にLINEからご連絡ください。



