「うちの鍼灸院は個人経営だから、社会保険はないと言われた」「国民健康保険と国民年金を自分で払っていて、負担が重い」。社会保険がない職場で働き続けていいのか、不安を感じる鍼灸師は少なくありません。
結論から言うと、鍼灸院が社会保険に加入しなくてよいかどうかは、法人か個人か、スタッフが何人いるかで決まります。法人の鍼灸院や、常時5人以上を雇う個人の鍼灸院は、原則として加入が義務です。この記事では、加入条件と確認方法、加入していないときの対処を解説します。
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鍼灸院の社会保険の加入義務は規模と形態で決まる
鍼灸院が社会保険(健康保険・厚生年金)に入る義務があるかどうかは、経営の形態とスタッフの人数で決まります。法人の鍼灸院は人数にかかわらず加入が義務で、個人の鍼灸院は常時5人以上の従業員がいれば原則として加入が義務になります。
社会保険とは、ここでは会社員などが入る健康保険と厚生年金保険のことです。保険料は院と本人が半分ずつ負担し、病気やけがのときの手当や、将来の年金が手厚くなります。
月末、国民年金の納付書を手に「同じ鍼灸師でも、社会保険のある院の友人とは手取りも将来も違う」と感じる。そんな経験がある人は、まず自分の院が加入義務のある職場かどうかを確かめましょう。
加入義務の判断の目安
| 院の形態 | 従業員数 | 社会保険の加入 |
|---|---|---|
| 法人(株式会社・医療法人など) | 1人以上 | 義務 |
| 個人の鍼灸院 | 常時5人以上 | 原則として義務 |
| 個人の鍼灸院 | 5人未満 | 任意(院が選べる) |
個人の事業所でも加入が義務になるのは、法律で決められた業種にあたる場合です。鍼灸院などの施術所は、その業種の一つである「医療保健業」に含まれます。
パートでも加入対象になることがある
正社員でなくても、週の労働時間や日数が正社員の4分の3以上あれば、原則として社会保険の対象です。さらに、週20時間以上、月額賃金8.8万円以上などの条件を満たし、勤務先が一定の規模以上なら、短時間勤務でも対象になります。
この短時間労働者の基準は、2024年10月から従業員51人以上の企業に広がりました。小さな鍼灸院では対象外になることが多いものの、法改正で範囲は段階的に広がっています。
「常時5人以上」は施術者だけでなく、受付スタッフなども含めた従業員の数で判断します。院長本人は含めないのが一般的です。パートの人を数に入れるかどうかは働き方によって変わるため、判断に迷うときは年金事務所で確認しましょう。
雇用保険は人数に関係なく入る必要がある
雇用保険は、社会保険とは別の制度で、院の規模や形態に関係なく、条件を満たすスタッフを1人でも雇えば加入させる義務があります。目安は、週20時間以上働き、31日以上雇用される見込みがあることです。
雇用保険に入っていれば、辞めたときの失業給付や、育児休業給付金、教育訓練給付金などを受けられます。社会保険がない院でも、雇用保険は入っていなければならない点を覚えておきましょう。
給与明細で確認する
- 健康保険料・厚生年金保険料が引かれているか
- 雇用保険料が引かれているか
- 保険証が「国民健康保険」か、院の加入する健康保険か
給与明細に雇用保険料の欄がない場合は、院に加入状況を確認しましょう。ハローワークで、自分が雇用保険に加入しているかを照会することもできます。
業務委託では保険の対象外になる
雇用契約ではなく業務委託契約で働いている場合は、社会保険にも雇用保険にも院を通して加入できません。実態が雇用と変わらないのに業務委託とされている場合は、注意が必要です。
業務委託の注意点は、鍼灸師の業務委託の記事でくわしく解説しています。
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社会保険がないと鍼灸師はどう困るのか
社会保険がない院で働くと、保険料を全額自分で負担する必要があり、病気で休んだときの手当や将来の年金も少なくなります。目の前の手取りだけでなく、長い目で見た差を知っておくことが大切です。
鍼灸師は体が資本の仕事です。腰や手首を痛めて休まなければならなくなったとき、保障の差ははっきりと表れます。
社会保険の有無による主な違い
| 項目 | 社会保険あり | 社会保険なし(国保・国民年金) |
|---|---|---|
| 保険料の負担 | 院と本人で半分ずつ | 全額自分で負担 |
| 病気で休んだとき | 傷病手当金がある | 原則として傷病手当金がない |
| 出産で休んだとき | 出産手当金がある | 原則として出産手当金がない |
| 将来の年金 | 国民年金に厚生年金が上乗せ | 国民年金のみ |
鍼灸院の多くは小規模
厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によると、2024年末のはり・きゅうを行う施術所は35,494か所、施術所などで働くはり師は136,736人でした。個人で営む小規模な院も多く、社会保険の有無は院ごとに大きく違います。
だからこそ、職場を選ぶ段階で保険の加入状況を確認することが欠かせません。
加入していないときの対処と職場選び
加入義務があるのに社会保険や雇用保険に入っていない場合は、まず院に確認し、改善されなければ年金事務所やハローワークに相談できます。あわせて、保険がしっかりした職場への転職も選択肢に入れておきましょう。
院に確認するときは、「保険のことを知りたいので教えてください」と穏やかに聞くのが基本です。責めるような言い方をすると、話がこじれやすくなります。
対処の手順
- 給与明細と保険証で、加入状況を確認する
- 院の形態(法人か個人か)とスタッフの人数を確認する
- 加入義務がありそうなら、院に加入の予定を確認する
- 改善されない場合は、社会保険は年金事務所、雇用保険はハローワークに相談する
- あわせて、保険が整った職場の情報を集める
年金事務所に相談すると、加入義務がある事業所かどうかを確認し、必要に応じて院に加入を指導してもらえることがあります。過去にさかのぼって加入手続きがとられる場合もあるため、早めに相談することが大切です。
求人で確認したいこと
求人票の「社会保険完備」は、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険がそろっていることを示すのが一般的です。「各種保険あり」のようにあいまいな表記の場合は、面接でどの保険に入れるかを具体的に確認しましょう。
辞めたほうがいい鍼灸院のサインは鍼灸院を辞めるべきサインの記事に、整骨院の場合は社会保険がない整骨院の記事にまとめています。
よくある質問(FAQ)
個人経営の鍼灸院に社会保険がないのは違法ですか?
従業員が常時5人未満の個人の鍼灸院であれば、加入は任意なので違法ではありません。ただし、常時5人以上を雇う個人の鍼灸院や、法人の鍼灸院は、原則として加入が義務です。院の形態と人数を確認しましょう。
社会保険がない鍼灸院でも、雇用保険には入れますか?
入れます。雇用保険は院の規模に関係なく、週20時間以上働き、31日以上雇用される見込みのあるスタッフを加入させる義務があります。給与明細で雇用保険料が引かれているかを確認しましょう。
社会保険がないと、どんな点で損をしますか?
保険料を全額自分で払う必要があるほか、病気で休んだときの傷病手当金や出産手当金が原則としてありません。将来の年金も国民年金のみになり、厚生年金の上乗せがありません。
加入義務があるのに社会保険に入れてもらえません。どこに相談すればいいですか?
社会保険は年金事務所、雇用保険はハローワークに相談できます。給与明細や雇用契約書、院の形態やスタッフの人数がわかる情報を用意しておくと、相談がスムーズです。
鍼灸院の求人で「社会保険完備」と書いてあれば安心ですか?
一般的には健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険がそろっていることを示します。ただし、試用期間中は加入しない院もあるため、いつから加入できるかを面接で確認しておくと安心です。
まとめ|社会保険の有無は院の形態と人数で確認しよう
鍼灸院の社会保険の加入義務は、法人なら人数にかかわらず、個人なら常時5人以上の従業員がいる場合に原則として生じます。雇用保険は院の規模に関係なく、条件を満たすスタッフを加入させる義務があります。
- 給与明細と保険証で、自分の加入状況を確認する
- 社会保険がないと、傷病手当金や厚生年金の上乗せがない
- 加入義務があるのに入れない場合は、年金事務所やハローワークに相談する
- 転職では「社会保険完備」の中身と加入時期を確認する
保障の整った職場で働くことは、鍼灸師として長く安心して働くための土台です。
保険や年金の不安を抱えたまま働き続けるより、保障の整った鍼灸院を探すことも一つの選択です。
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